そんな「美鳥の日々」の外伝は、コミックス7巻に収録されてて良かったですね! 深沢です。
前回書いた超増刊のエントリが『書店員のたわごと』のたかさんの日記でネタになっててちょっと嬉しかったので、今回もまた調子に乗って先月25日に発売された超増刊についてちょっと触れてみたい。
□
今回の夏号では「美鳥」のおっぱいみたいなキャッチーな売りはないのですが、少年マンガ愛好家的な意味においては、やはり何と言っても能田達規先生が登場しているのが最大の売りでしょう。
かつて旧アスキーコミックで「がらくた屋まん太」を、週刊少年チャンピオンで「おまかせ! ピース電器店」「ORANGE」を掲載し、どの作品も好評を博した――というか、どのマンガも私のハートにたいそうグッと来たので個人的に大好きな――あの能田達規氏が、何の因果かサンデー超増刊に登場。それも、掲載位置で他のサンデーの新人作家とほぼ同列の扱いを受けているというさりげなさで、極めて控えめに登場しています。氏を知っている人なら、おそらく「どうしてこの人がこんなところに!?
」と思ってしまうこと間違いなし。私も事前情報がなかったら、「能田達規」の名前を見た途端に驚いて死んじゃうかと思ったくらいです(おおげさ)。
能田氏は以前「サンデーGX」に一度読み切りを掲載したことはありましたが、純粋な少年サンデー系列の雑誌に作品を載せるのは、多分これが初めてでしょう。実績の割に掲載位置が低めなのは、そういう関係もあるのかも。
勿論、今回の読み切り『マッドレイダーズ』も能田テイスト満載で面白かったです。
基本的な筋書きは「王族の生き残りの姫君から依頼を受けた少年トレジャーハンターが、軍隊相手に大活躍!
」みたいなノリの冒険アクションものですが、そこに(能田氏のマンガには欠かせない)精神的なライバル関係にある父と息子の競い合い、そんな関係でも確かに感じられる親子の絆の深さ、敵味方が何度も入れ替わるどんでん返しの連続、そんな状況下でも信念を曲げずに行動する主人公の潔さ、そして(これも能田氏のマンガには欠かせない)スレンダーでかつエッチな体つきの女性キャラが大暴れと、とても密度の濃いマンガになっています。
それでいてあまりゴチャゴチャした印象もなく、一気にテンポ良く読ませる紙面構成もよくできてます。同列に掲載されていた他の新人作家の作品と比べると、さすがに完成度は高いと感じました(キャリアを考えれば当然なんだけど)。
能田氏のマンガは、ネタが発明であれサッカーであれ、常に「純粋に子供が読んで楽しめる少年マンガ」が描ける才能を持っている人であると思っています。どの雑誌でも良いですから、早いところ連載を持って、再び第一線で復帰してくれることを期待しています。
□
その他の掲載作品で気に入ったものを上げるとすると:
今回は、前号のように読んでいてカタルシス以上の理不尽なストレスを感じてしまう系統の作品が少なく(皆無ではないけど)、全体的にかなり読みやすくなっていると言えます。
この中でも、桐幡歩氏の「鬼月」はかなりの注目作(あるいは異色作)。この人のデビュー作「魔法の卵使い」もそうでしたが、この人の描く作品は、最近のサンデーではあまり見られない「読者の感性に訴えかける独特の力」を持っているように思えます。作者のセンスが普通のサンデー作家とはちょっと違っているというか何というか。
作品のタイプは全く違うのですが、なんか初めて「トガリ」の夏目義徳氏の作品をサンデーで読んだ時と似たようなものを感じた気がします(不吉?)。
今後桐幡氏がサンデーで連載を持てるようになるかどうかはさすがに判りませんけど、サンデーがどうとかいう以前に、純粋に新人作家として気になる存在です。今後の登場にも期待したいところ。
あと、超増刊最大のウリであるところの連載作品「あやかし堂のホウライ」も良かったです。前回で人生最大の艱難辛苦を乗り越えた主人公・アヤカが逞しく成長していく様子を見るのが楽しくなって来ました。
そして今回は、眼鏡っ娘で意地っ張りで人の言うことを素直に聞けないけど実は寂しがりやさんでかつドジっ娘、というかなり極まったお嬢様・四位名(しいな)さんが出て来ますが、この娘が(色々な意味で)秀逸過ぎ。彼女は、まさに妖怪に襲われるためにこの世に生まれ出たような、そんな被虐感溢れるキャラとして描かれています。勝ち気な女の子が不安のあまりボロボロ泣くところが大好きな人なら!
勿論、最後は主人公のアヤカと四位名がちゃんと助かって仲良くなる健全なハッピーエンドが待っていますのでご安心を!(誰に言ってるのか)
結局、今回もまたロクでもない紹介をしてしまって申し訳ありません…orz
writeback message: このサイトのコメント受付は終了しました。