買いましたー!(おそいよ)
そんな訳で感想。
読み終わって最初に思ったのがこれ。この巻は、「絶対可憐チルドレン」というマンガにおける『第一部完』的なポジションに相当すると思いました。例えこのマンガが途中で打ち切りになろうとも(なりませんでしたが)、作者は最低限でもここまでは描きたかったんだろうな、というエッセンスが込められている巻という感じ。
「サイコ・ダイバーズ」編の最後で、皆本と薫が将来を約束することで兵部が作った「予知を元に未来での可能性を捜すために作った夢」から脱出できたことは、この作品が冒頭で提示した「破滅の未来」を回避するための方法をこの二人が見つけ出したことを意味しています。「未来は変えることができる」という希望を皆本に(そして読者に)与えるこのエピソードは、最初に「破滅の未来」を提示した以上は物語の中に織り込む必要があるものであり、それを無事に描ききることができたことで、「絶チル」は作品として一つの大きな山場を超えたのではないかと個人的に思っています。そういう意味での「第一部完」です。
その後の「ナショナル・チルドレン」編や、現在進行中の「ガール・フレンズ」編を読む限りでは、薫と皆本の間に生じた「絆」を更に他のキャラクターにも広げる方向に話を持って行くつもりなのかな? という気がしています。
個人的には、せめて葵には人並みの幸せを掴んでもらいたいなあと思います。でないと泣くよ?
薫と皆本の関係のみならず、皆本がチルドレンを育成する「超能力美少女育成コメディー」なるこのマンガのコンセプトに対しても変化が発生したのではないか、と思わせたのがこの巻。
このマンガが始まった頃の皆本のスタンスは「子供への厳しさと愛情を合わせ持った保護者」という立派なものであった(というか、少なくとも本人はそうあろうとしていた)はずだったのですが、現在では徐々に「アタシを叱らないハンサムで優しくて頭が良くてしっかり者で高収入の年上のお兄さん。もしかしたら、彼との甘いロマンスも!? キャッ♥
」的な、何かこう女の子の願望を実現したキャラクターになりつつあるんじゃないかという気がしてなりません。
チルドレン達と皆本の間の関係の変化が明確になったのは、「ハート・ブレイカー」編で皆本が『僕と一緒に戦ってくれ!
』と言ったシーンでしょう。「自分が守ってあげなければならない子供」ではなく、「共に戦うチームのメンバー」としてチルドレン達を再認識した瞬間がココです。4巻の「サイコ・ダイバーズ」その4の穴埋めページには『なんで二回言うの
』『だいじなことだから
』という会話が描かれていますが、それだけこのシーンが皆本にとって大事なことなのだと暗に訴えているのです(こじつけ)。
そして、その後の「ハート・ブレイカー」での皆本の薫へのメロメロっぷりは皆さまご存じの通り。ロリコンムッツリスケベ呼ばわりされるに相応しいデレっぷりが見事でした。すっかり薫にヤラれちゃってますよね皆本。このマンガが「超能力美少女育成コメディー」と銘打って始まった頃は「皆本が美少女に育成されるマンガになるに違いない!」とか冗談で言ってたものでしたが、なんかソレが本当になりつつあるような気がしてならないのです。
あと4巻と言えば、やはりどうしようもない(褒め言葉)おまけマンガにも触れなければなりません。
メタ的な視点で物語の構造を捉えてそれをギャグに落とす技術の高さはさすがパロディ描かせたら上手い椎名高志だなあと素直に感心させられたり、あんなこと言いながら実は椎名先生も本心では「ラブひな」みたいなマンガを描きたいのかと勘ぐってしまったりした訳なんですけど、唯一惜しまれるのは、主人公が内心では裸を見たくて仕方がないと思っているメインヒロインの立場のキャラが『絶チル』には存在していないため、この手のラブコメマンガのお約束である『悪友から「××(ヒロインの名前)の裸が見られるかも知れないぜ?」とそそのかされることで、普段は優柔不断な主人公が女風呂を覗く気になる
』シチュエーションを再現できないところです。これ重要ですよ!(力説)
で、その後は主人公倒れる→主人公の裸をヒロインに見られる→何故かヒロインに介抱されることになる→何かいい雰囲気になる→途中で理不尽な形で邪魔が入る→寸止めラブコメ成立、というフローチャートで粛々と処理されれば完璧です。少年誌におけるラブコメは、如何に寸止めシチュエーションに持って行くかが重要ですからね! 寸止め重要! 「ラブひな」も「いちご100%」も寸止めで世界を獲りましたからね!
しかし「絶チル」の場合、皆本が薫の裸を見たがったらその時点で寸止め以前に社会的にアウトですし、万が一薫が意識を失った全裸の皆本に遭遇したりしたら、寸止めが成立しなくなる可能性が高くなってやっぱり社会的にアウト間違いなし。ムッツリスケベな二十歳の男とおませでエロな十歳の少女という設定は、構造的に典型的エロコメ的なベタ展開を許さないのです。この辺にも、「絶チル」というマンガの設定の妙が伺えます(強引)。
個人的に、4巻のオマケマンガでは「サイコダイバーズ」編で皆本が寝ている間に夢見ていた薫とのエロい妄想シーンを拝みたかったのですが、その辺は作者よりもむしろファンが同人誌を作って自らカバーするべき領域なのでしょうか。夏コミ行けるといいなあ(捜すの?)。
あと、朧さんの乳は控えめに言っても明らかにデカ過ぎると思います。
結局4巻の感想じゃない文章になってしまったような。まあいいや(おわり)。
皆本がサイコ・ダイバーズのラストで薫に口づけしようとしたのは、社会的にはちょっとまずいんじゃないかと思っていました(笑)。だって「夢の中」とわかっていたんですから、「相手は実体は10歳」と知りつつキスしようとしたわけですからね!そんな簡単に心のタガを外してしまっては、以前のような兵部の精神攻撃をもう一度受けたら歯止めが効かなくなってしまうんじゃ…?これは、もっと後で出すべき描写じゃないのか椎名先生?という所を疑問に感じていたのですが、深沢さんの
>例えこのマンガが途中で打ち切りになろうとも(なりませんでしたが)、
>作者は最低限でもここまでは描きたかったんだろうな、というエッセンスが
>込められている巻という感じ。
という考察を読んで「なるほど」と腑に落ちました。確かに、不本意な打ち切りが続いた後としては、守りの戦略として「最低限、ここまでは描きたかった」という心理が椎名先生に働いた、ということは大いにありそうです。そう考えるとここまでの展開が(時として拙速気味の要素を孕みながらも)いやに早かったのも納得です。さすがは深沢さん、感服です。
以前、「普通の敵(後編)」で「イヤボーン現象を出すのは早すぎるんじゃないか」という疑問を呈したことがあった( http://fukaz55.main.jp/zettaibbs/bbs/20050907_223657.htm )のですが、それに対しても同じ説明がつきますね。
>「ラブひな」も「いちご100%」も寸止めで世界を獲りましたからね!
この文脈で深沢さんが「エイケン」を引き合いに出さないなんて!裏切られた気分です(笑)。
まあ、作者も社会的にマズいことが判っているからこそ、後で兵部から「ロリコンムッツリ助平」呼ばわりされるネタを後で入れることができたんでしょう。
「絶チル」というマンガは、10歳の薫と20歳の皆本の年齢差から来るあやうい関係も面白さのエッセンスの一つとなっているのは間違いありません。おそらく、今後もヤバそうな臭いを漂わせながら、この手のネタを計算高く織り交ぜていくのではないかと思われます。
がんばれ皆本の自制心。
あと、「エイケン」は寸止めてないですから! アレは「ラブひな」とかとは違う方向に突き抜けてますから!
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