2007/02/04

■ミッション・スクール

 「マリみて」の蔦子さんの名前は、『蔦の絡まるチャペルで祈りを捧げた日』で始まる「学生時代」から来ていたという説を展開!(挨拶)

 マンガではないですが、せっかく読んだのでちょっと紹介。

ミッション・スクール (中公新書) ミッション・スクール (中公新書)
佐藤 八寿子
中央公論新社 / ¥ 798 (2006-09)
 
発送可能時間:在庫あり。

 「マリア様がみてる」の大ヒット以降、この界隈でも物語の舞台としてよく使われるようになったミッションスクール。この本は、近代日本におけるミッションスクールなる存在に対する社会的なイメージの時代による移り変わりを、様々な文献や文学作品を紐解いて解説しています。

 この本が我々にとって面白いポイントは、現代におけるミッションスクールに対する大衆イメージの代表例として、「マリア様がみてる」の巻頭に載っている『「ごきげんよう」「ごきげんよう」』から始まるあの文章を紹介しているところ。この本の著者の佐藤八寿子氏は、序章において「マリみて」の巻頭文を引用した上、リリアン女学園は作者が創作した架空の存在であって実際にはこのような学園は存在していないにも関わらず、『非常にリアルにわれわれのイメージするところのミッション・スクールを描き出している』と述べます。

いかにもそれ「らしい」断片から構成されたのが、作者オリジナルのリリアン女学園なのだが、われわれはそこに違和感を覚えない。むしろ、どこにも実在しないリリアン女学園は、私たちの「中」にあるミッション・スクールを如実に体現している。では、私たちの中にあるミッション・スクールとはどのような存在なのか。

(ミッション・スクール 6ページ目より)

 この疑問を出発点として、「マリみて」で語られているようなステレオタイプな「私たちの中にあるミッション・スクール」のイメージが如何に形成されていったのかを、明治から平成までの時代を追う形で解説しています。

 紹介されている文献は、明治時代の新聞記事から田中康夫氏のエッセイに至るまで多岐に渡りますが、特に大正~昭和にかけての文学作品や映画に見られる「ミッション・ガール」(ミッションスクールに通う女学生)についてはかなり詳しく考察と分析が行われており、結果的に「ミッション系女学生で観る近代文学史」として読むことができるようになっているのが面白いところ。
 また、戦後における「ミッチーブーム」も取り上げており、美智子さんが幼稚園から大学まで一貫してミッション系の学校に通っていたことがミッションスクールのブランドイメージを大きく向上させた、としています。「マリみて」に出てくる「十八年間通い続ければ温室育ちの純粋培養お嬢さまが箱入りで出荷される」ってのは、この時に形成されたミッションスクールのイメージを反映させたものなのかな、とか思いました。
 こんな感じで、「マリみて」に代表されるステレオタイプなミッションスクールの大衆イメージは、明治以降の長い歴史を経て形成されていったものである――ということがよく判る本です。

 基本的にはミッション・スクールに本気で興味がある人が読む本ですが、「マリみて」とかのミッションスクールが舞台の少女小説が大好きな人が読んでも楽しめるのではないかと思いました。
 また、最後の方には自分の娘をミッションスクールに入れたくて仕方がない父親の話も出てくるので、娘ができたらリリアン女学園に! とか、今度生まれ変わったらリリアン女学園に入って、紅薔薇さまの信奉者に! とか本気で妄想している人にもお勧めしておきます。

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