シロが出てこないのに表紙がシロだ!(ワイド版18巻挨拶)
そんな感じで、「GS美神」のワイド版18巻が出ました。この巻で、いわゆるアシュタロス編は完結です。
正直アシュ編について語るのはもうコリゴリなのですが(笑)、椎名高志先生のファンサイトを名乗る以上は今の機会にこの話題に触れない訳にもいかないので、がんばってみます。
□
で、勿論アシュ編終盤と言えば「ルシオラの死」に端を発するファンの大騒ぎっぷりが今も思い浮かぶ訳なのですが、当時このサイトに寄せられたコメントのなかで、今でも心に残っているものがこれです:
ルシオラ、彼女の悲劇は7年前に設定されたキャラクターの枠組みに負けた事
そして、主役より遥かに魅力的だった事
もし、彼女が枠組みのない作品でヒロインとして主演していたら・・・・
と思う次第であります。
でも、ルシオラを創ってくださってありがとうございました椎名先生
椎名先生は、以前自分のサイトのイラストギャラリーの中で「そりゃ私だってできればハッピーエンドにしてあげたかったけど、横島と美神の間に割り込むなんて無謀だよ
」という趣旨のコメントを載せていました(現在はもう該当のエントリはありません)。
個人的にですが、アシュ編が抱える問題点は、読者による上記のコメントとこの椎名氏のコメントの間にある、両者の間の距離感に集約されると思っています。
ルシオラがあの作品の中で「死、そして転生」という妥協案なしで幸せになるためには、「GS美神」という作品の枠組みの根幹を成している美神=横島の関係性を崩さなければなりません。もしルシオラが最後まで生き残って美神除霊事務所に所属するようになり、そこで横島とルシオラが新しい関係を築くということになれば、これまで培われてきた美神と横島の間の関係(=美神が横島にとっての憧れであった存在からスタートし、美神が横島をパートナーとして認める関係に成長するに至った、この作品の根幹に関わる部分)が壊れてしまうのは必至です。
長い間の連載によって熟成された二人の関係を、そしてこの作品を成り立たせている「大枠」の部分を、ルシオラというキャラクターのためだけに壊すことができるかどうか。アシュタロス編における焦点は、最終的にはこれに集約されたと言っても良いでしょう。実際ルシオラには、読者がそれを期待できるだけの魅力と人気がありました。
勿論、椎名氏がこの枠組みを壊す路線を選択することはありませんでした。というか、最初からその選択はありえなかったとも言えます。
美神と横島の関係の強さを見せるシーンがアシュ編の中にも何度も出て来たことや、ルシオラでさえ「横島は美神と一緒になるべき」という考えで動いていたことが、この件に対する作者の意志を物語っています。また、アシュ編以降も連載が続くことが決まっていたこともあって、作品の大枠を今更崩すことはできなかったという事情もあったのかも知れません。
しかしこの判断は、コアのファンの間で「結局椎名氏は、自分の作品が一人のキャラによって壊れることを恐れたのではないか?
」というネガティブなイメージを結果的に与えてしまったのも確かなところでしょう。
作品の連載を維持するために行った判断が、その作品の人気を支えてきたファンの心理からかけ離れていた、という皮肉な状況が生じてしまったのです。
そしてこのネガティブイメージは、アシュ編終了後に発表されたエピソードによって、謀らずも増幅してしまうことになります。
アシュ編終了後のこのマンガは、元々この作品の要素ではなかった「魔族とのバトル」「ディープなラブロマンス」という存在を排除し、かつてのピュアでプリミティブなコメディマンガとしての姿に戻すことを目標にしていたように思えます。おそらく作者の側としては、アシュ編は「劇場映画版」のような、本編とは独立した番外編みたいな位置付けとして捉えて欲しかったのではないのでしょうか。
でも、多くの読者はその意図に反し、アシュ編終了後の「GS美神」を純粋にアシュ編の続きとして読もうとしていました。そして、そのような視点でアシュ編後のエピソードを読むと、あらゆる要素が「アシュ編をなかったことにする」意志に溢れたものとして見えてしまうようになるのです。
アシュ編最終話におけるルシオラの「救い」は『彼女は横島の子供として転生する』ということだったのですが、その横島のお相手となる(はずの)美神令子との関係は一向に進展せず、逆に横島絡みのラブコメ話そのものがほとんど存在しなくなってしまいます。その一方で、アシュ編までは大活躍だった「文珠」はほとんど使われなくなり、アシュ編終了直後に掲載された「ファイタースターター」編ではルシオラ達が仮住まいとしていた屋根裏部屋を火事で焼き尽くしたりと、何というかこう「アシュ編はなかったことにして行きたい!」みたいな意識を感じるエピソードが出てくる始末。
「ああ、椎名センセはアシュ編やるのがよっぽどイヤだったんだろうなぁ
」と穿った楽しみ方ができるひねくれた読者はともかく、アシュ編のことが忘れられないファンの中では、作品に対する不信感は募る一方でした。
読者のニーズと作者のやりたかったことの乖離が、この時期に生じていたのではないか? と私は思っています。
アシュ編以後、椎名氏はあまり積極的にラブコメや人間以外の女の子を描かなくなり、氏の作品は新たな方向性を模索するようになります。アシュタロス編は、漫画家・椎名高志氏にとって、大きなターニングポイントとなったことは間違いありません。
結局、氏が再び「人間じゃない女の子サイコー!
」という路線のピュアでプリミティブなコメディマンガを公表するまでには、アシュ編から約5年の歳月が必要になった訳なのですが、その辺についてはいずれ機会があれば触れてみたいと思います。
なんか今日はエラそうだなオレ。すみません。
fukazawaさん、こんにちは。こちらに書き込むのは始めてとなります。
今回のアシュタロス編の考察についてですが、まさに我が意を得たり!という思いがしました。
特に文中で紹介のあった、
『ルシオラ、彼女の悲劇は7年前に設定されたキャラクターの枠組みに負けた事
そして、主役より遥かに魅力的だった事
もし、彼女が枠組みのない作品でヒロインとして主演していたら・・・・
と思う次第であります。 』
というコメントについては、私も胸が打たれました。
アシュタロス編が連載していた頃、私は熱心なサンデー読者だったのですが(今は時々マンガ喫茶で
軽くチェックする程度です)、C-WWWの存在はまったく知らず、ネット上でこんなに熱い議論が交わ
されていたとはまったく知りませんでした。
(今思うと、残念な話です。ついでに言うなら、当時はバリバリの仕事人間で、将来自分が二次創作等
という趣味を持つとは、夢にも思わなかったです。;^^)
結局のところルシオラの悲劇は、ルシオラというキャラクターのもつ魅力ゆえに、原作ではそうせざるを
得なかったということなのでしょう。おキヌちゃんファンには失礼ですが、例えば横島×おキヌのように、
ラブっぽいけど美神の立場を脅かすほどではなければ、彼女を死なせる必要はなかったわけで、
作品中に復活エピソードを盛り込むことも不可能ではなかったかもしれません。
(おキヌちゃん復活の二番煎じという批判は避けられないでしょうが)
彼女の魅力さゆえにファンが増大すると共に、その魅力さゆえに作品から退場せざるを得なくなるとは
ある意味、矛盾した存在なのですが、やはり原作のGS美神は美神と横島の物語である以上、仕方の
ないこととしか言えないのかもしれません。
しかし、『仕方がない』という程度の言葉では割りきれないのが、大多数のルシオラ-の思いでしょう。
私自身、ほとばしるパトスをペン(キーボード)に注ぎ込んで、執筆を続けています。
(その割には遅筆で、なかなか話が進まないのが問題なのですが。汗)
はじめまして。
最近、GSを読み始めてはまってしまいました。
テンポの良さと情報量の多さ。まさに漫画の醍醐味です。
☆さて、アシュタロス編を背景抜きで、純粋にストーリーとして見た場合、一つの仮説が生まれます。
すなわち
「アシュタロスの最終目的はルシオラを人間に転生させることであった」
☆アシュタロスに関して、本来の設定を考えてみます。
1 過去、未来を見通す事が出来る。
つまり、未来を予測することが出来るのです。
2 上級魔族には性別はそれほど意味がない。
永井豪先生の「デビルマン」「デビルマンレディ」に登場するサタンには性別はありません。
男の姿であるのは、戦闘に都合が良いからにすぎない、と考えられます。
また、彼(彼女?)の作った部下が全員女性ということからも、想像できます。
「神は自らの姿に似せて人間を作った」とあり、アシュタロスもそれに習ったと思われます。
それにイラストでも、アシュタロスが女性に描かれている場合もあります。
ネットで調べれば出てくるでしょう。
3 秩序から自由になりたかった。
☆以上の点か考えると、アシュタロスはまず、自分の魂の主要な部分を半分に分けて、メフィストを作り、人間に転生するように誘導します。
これが、美神令子になります。
さらに、高島が転生して、横島になった時点を見計らって、さらにその半分からルシオラを作ります。
この時点で、アシュタロスの魂には力以外の重要な部分が抜けてしまいます。
力だけの抜け殻になったアシュタロスは、最後は究極の魔体として消滅します。
最後に横島の中にあるアシュタロスの分身であるルシオラの因子がメフィスト・美神令子の因子と組み合わさり、アシュタロスの転生といえる存在が生まれます。人間であれば、魔王と違って、運命から自由になります。何しろ、自分の意志で聖なる存在でも邪悪な存在にでもなれるのだから。
こうして、創造主や宇宙意志を出し抜いて、人間に転生する。たぶん、魔王としてみれば、一千年もそれほど長くはなかったのでしょうね。
☆では、なぜ横島が選ばれたのか。
一つの仮説として、土着の神が一神教に否定されて、魔族となった原因となるアルマゲドン大戦が起きた時にアシュタロスも土着の神として戦闘に参加する。
戦況は悪化の一途を極めた。そんな中、アシュタロスは一人の天使によって助けられることとなる。
敵を助けたことでその天使は人間に転生されるという刑罰を下される。
それが、横島の前世であった。
魔族となったアシュタロスは人間に転生した横島を忘れることが出来ず、自分も人間に転生することを誓う。
そして、計画は実行された。
☆ルシオラの転生した子供が主役のストーリーのために、ヒノメが伏線として登場したのだろうか。
屋根裏部屋では、ルシオラ×パピオラ→シロ×タマモと住人が変わり、その次が、
転生ルシオラ×ヒノメで、「絶対GSチルドレン」とかいう題で書いたら面白いかも。
ファザコンのルシオラとシスコンのヒノメに振り回される横島。
さらに、ルシオラが魔王アシュタロスの転生と知り、つけねらう魔族の集団、とか。
ルシオラの悲劇を目の当たりにして、「彼女を何とかしてやりたい!」と思って二次創作を書いちゃった! って方を、私も何人か知っています。
湖畔のスナフキンさんもその仲間だったんですね! ルシオラで覚醒! 素晴らしい!
スナフキンさんの「『仕方がない』という程度の言葉では割りきれない」ってのは、まさに当時の(そして今も)ファンの心理を代弁していると思います。椎名ファンは割と理知的にマンガを読み解く能力を持った方が多い傾向があると思うのですが、だからこそアシュ編がああなっちゃったのも理屈では理解できてしまう訳で。
ベテランの椎名ファンにひねくれた読者が多いのは、アシュ編に対するアンビバレンツな思いが交錯しているところもあるんじゃないか、と思っています。ひねくれてるなぁ(オレも)。
あと本文でフォローするの忘れてましたが、今読み返すとワイド版18巻は普通に面白いです(笑)。
それとなく横島を気遣う美神の姿を再発見。彼女もあの戦いで成長してたんだなと思った。
コピーキャットさんのようにあれこれと憶測を考える懐の深さがあるのも、アシュ編の魅力の一つですね。
writeback message: このサイトのコメント受付は終了しました。