2005/06/26

嗚呼、絶チルが行く…

 ピアノ・ファイアのいずみのさんが、「絶対可憐チルドレン」連載開始に対するコメントを述べられていました。
 せっかくの機会なので、いずみのさんのコメントをダシに、もうちょっと今の自分の「絶チル」に対する現在の何とも言えない思いを文書化してみることにします。

子供にウケるか問題
ピアノ・ファイア: 絶チルはラブひなだ より

 そこをあえて週刊少年サンデーで連載するということは、「子供などの一般読者に読んでもらいたい」あるいは、「サンデーにSFコメディを復活させたい」という願望が込められている筈です。
 そこには「自分が描いているものは大衆(=子供から大人まで)が好む要素がどこか必ず含まれている筈だ」という希望が込められている筈です。

 椎名先生は「てれびくん」で「ウルトラマンネクサス」のコミカライズを担当していましたが、そこでの経験から「自分のマンガは子供相手でもヤレる!」という自信を深めたのではないか、という気がしています。

 椎名ネクサスを読んだことがある人なら判っていただけると思いますが、あのマンガは子供読者に対して全く容赦せず、ストーリーや作品のテーマも基本的に原作の(残酷な部分も含めた)テイストをできるだけ活かすような形で表現しています。あえてそうした理由は、いったい何処にあったのでしょうか。
 その理由と思われる発言を、以前「宇宙船」3月号に掲載されたインタビューから抜粋します:

――(「ウルトラマンはしゃべらない」と感情表現を排除する宣言をしているが? という質問に対して)

「(前略)喋った方がわかりやすいしハナシ早いですもんね。
 でも今はそのままやっても読者は普通についてきてくれますから」

 「そのままやっても読者は普通についてきてくれますから」!
 幼児向けマンガにしてこの強気の発言。この部分に、椎名氏の読者に対する信念が垣間見えます。椎名氏は「子供向け」だからと表現を判りやすくするのではなく、「読者は判ってくれる」と判断した上で、自分の考えた「ウルトラマン」の魅力を画として子供達に表現することを注視したのです。
 自分から子供におもねるのではなく、子供を自分のマンガの位置まで引き上げようとする意志を感じます。

 「絶対可憐チルドレン」も、椎名氏自ら「週刊少年誌作品としてはいくつか文法違反がある」と自覚しているにも関わらず、読み切りの頃から現在に至るまでまったく妥協することなくハードなSF路線を貫き通していますが、その根拠にはネクサスの時と同様の「例え週刊少年誌作品の文法から外れた部分があっても、読者はついてきてくれるから大丈夫」という考えがあるからなのではないか、と思います。
 つまり椎名氏は、(子供も含めた)我々読者の知性を信頼してくれているんですよ。我々にとって、こんなに嬉しいことはありません。

「武装錬金」になるか「愛人」になるか問題

 これは『武装錬金』の和月伸宏とは根本的に異なる点で

 「絶チル」の辿る運命が「武装錬金」と同様になるのではないか? という私の懸念ですが、これは連載の経過や作者の掲載誌に対する姿勢などはともかくとして、『結果的にそうなりかねないなあ』と思っているところから来ています。
 駒木氏は、「武装錬金」に対する懸念として「週刊少年マンガ誌の限界」(クオリティの高い話を、週刊ペースで、かつ制約が多い少年マンガの枠内に収めることは、作品のテーマを考えると難しい)、「ジャンプシステムによる弊害」(いくら物語の質が高くても掲載誌のシステムには逆らえない)の二つをあげていますが、今のサンデーで「絶チル」を連載する上でも、やはり似たような問題があると考えます。

 「絶チル」が内包しているテーマは、「人種差別」「力を持つ者の義務と責任」「自分とは違う『他者』に非寛容な社会への警鐘」「希望が見えない未来を変える可能性の模索」など、どれもこれも『銀の弾丸』が存在しない、真面目に考えれば考えるほどやっかいなものばかりです。これを単なるフレーバーとして使うのではなく少年マンガとしての「テーマ」に据えるからには、マンガの中でこれらの問題に対するそれなりのソリューションを提示し、読者に『希望』を与える必要があります。よりによって週刊少年サンデーで
 もし自分が担当編集者だったら、絶対頭抱えてますね。椎名氏の担当に生まれなくて本当に良かったです。

 まあ、この辺については、それこそエンターテナーでありストーリーテラーである椎名高志氏の手腕を信頼するしかありません。
 期待してます先生!(←前にあんなこと書いておいてコレか)

 前に例えに出した「愛人 -AI・REN-」も割と上記に近いテーマを掲げた作品だったのですが、田中ユタカ氏がエロマンガで培ったヒューマニズムを最大限に発揮した結果、キチンとこれらのテーマに対する希望を提示することに(エンターテイメントの枠内に収まる形で)成功しています。
 同様のテーマを描いたマンガで他に「これはすごい」と感心したのは、サンデーGXで連載されていた「ネコの王」(小野敏洋)でしょうか。何故か「禁断のブルマ魔法」以外で語られることが少ないマンガなのですが、実は色々と考えさせられる奥深さを持っていると思います。

光は絆だ問題

 絶チルがサンデーでヒットするということは、ラブひながマガジンでヒットすることと同じような意味がある、と言えなくもないでしょう。少年誌に風穴を開ける、という。

 「ラブひな」が当時のマガジン(ひいては、ティーンエイジを対象にした少年漫画全体)に大きなパラダイムシフトを起こしたことは事実です。しかし、当時の「ラブひな」と今の「絶チル」とでは、置かれている状況がかなり異なるのではないかと思っています。

 「ラブひな」の場合、当時はギャルゲー的なノリが通じるマイナー雑誌でしか通用しないムーブメントとして見られていた「美少女わんさかコメディー」の概念を、あえて週刊少年誌に大々的に持って来て勝負したというところが凄かったと思うのですが、少なくとも当時の赤松氏には「時代は確実にこっち側に来ている。だから勝てる」という読みがあったはずです。
 しかし「絶チル」の椎名氏の場合、「時代はむこう側に行ってしまった」と考えている様子。現状の自分(の作品)が置かれた状況に対し、かなり厳しい見方を示しています。

完成原稿速報040726 より

さて、この作品、かつてないほど入れ込んで描いてます。しかしそれがウケるかどうかというと、実は全然自信がありません。もともと「チルドレン」には週刊少年誌作品としてはいくつか文法違反があり、そこんところでこの数ヶ月すったもんだしてたんですが、結局その問題はほとんど改善されてないままなんですね。

完成原稿速報040813 より

改造の件といい、スピンちゃんの件といい(笑)、我々大きいお友達にとって少年誌はもうあまり居心地のいい場所ではないのかも。

 おそらく椎名氏は、自分が描くタイプのマンガが、今の少年誌が求めているマンガとはちょっと離れた場所にいることを自覚しているものと思われます。
 特にサンデーの場合、前編集長時代は「子供のための子供向けマンガ」に必要以上に拘っていたフシがあったようなので尚更でしょう。例え作者が「通じる」と信じていても、雑誌編集部が「通じない」と思ってしまえばそれまで。厳しいですね。
 更にサンデーに限って言えば、前作「一番湯のカナタ」が結果的に惨敗となってしまったことも、編集部として厳しく椎名氏に当たらざるを得ない状態に繋がっているでしょう。再び少年サンデーという舞台に戻ってくるためには、3年の歳月と、その間の数多くの短編作品での実績が必要だったのです。

 サイトでは「俺が打ち切られたら、誰かがあとをついでくれ。光は絆だ。」と冗談めかして書いてはいますが、たぶんこれは椎名氏の偽らざる本心です。本心。
 「絶チル」は、氏が光と信じる「背骨の通った美少女SFコメディー」を具現化したものであり、そしてこの系統の作品を心から必要としている読者は必ず存在しています。もし「絶チル」がいずみのさんが言うところの『少年誌に風穴を開ける』結果に繋がらなくても、それを必要としている読者がいる限り、SFコメディーの意志は「絶チル」に影響を受けた他の漫画家に受け継がれて行って欲しい。
 そんな願いをかけてしまうほど、今の椎名氏は今の状況を自分にとって相当不利だと考えているように思えてなりません。

 新連載に挑む今の椎名氏の心理は、「斑鳩」(D-LIVEじゃなくてシューティングゲームの方)の1面に出てくるメッセージに近いものがあるのかも知れません。というか、私は勝手にそう解釈しています。

嗚呼、斑鳩が行く・・・・・・
望まれることなく、浮き世から
捨てられし彼等を動かすもの。
それは、生きる意志を持つ者の
意地に他ならない。

 浮き世=少年マンガのメジャージャンルから捨てられた彼等=椎名高志が、生きる意志を持つ者の意地=自身は面白いと信じているけど今ではすっかりマイナージャンルになっちゃったSF路線のマンガを描き続ける執念を抱きながら動き始める。嗚呼、絶チルが行く…

 ここは本当に椎名ファンサイトなのでしょうか?(永遠の自問)

Posted at 00:00 in マンガ::絶対可憐チルドレン

2005/06/25

サンデー30号感想リハビリ中

  1. 小枝にスカートが引っかかって困ってる時音(結界師)
  2. 鼻魔神の瞳(ブリザードアクセル)
  3. 桂ヒナギク(ハヤテのごとく!)
  4. ひき逃げアタック(こやしや我聞)
  5. たいへんに男らしいリーゼさん(からくりサーカス)
  6. 番外.「いでじゅう!」最終回

1. 小枝にスカートが引っかかって困ってる時音(結界師)

 「クロザクロ」の幹人がずっとパンツ一丁姿なのには、何か深遠な理由が!?(挨拶)

 そんな感じで、久しぶりにサンデーの感想です。こんにちは。
 仕事が鬼のように忙しかった間も一応サンデーは買っていたんですけど、ちゃんと中身を読む時間がほとんど取れなかったため、連載マンガの内容が記憶からほとんど欠落していたことに気付きました。
 たとえば「結界師」の場合、一度登場したはずの黒芒楼のメンバーの顔や特徴を、私はまったく把握できていません。彼らは「裏会」幹部メンバー同様、今後このマンガに深く関わって来るのは確実でしょうから、「結界師」をちゃんと楽しむならとりあえずキャラを知っておく必要はあるかな? とは思っているのですが。
 今週号の話を読んだ結果、とりあえず「牙銀」というキャラは、アニメ化されたら山口勝平が声を担当しそうなタイプであることは把握できました。この調子でリハビリに努めたいと思います。

 そして今週のサンデーですが、小枝に制服のスカートが引っかかって困ってる時音の姿にグッと来たので「結界師」が一位ということで(バカ)。控えめなエロスをわきまえてる時音さんがステキ。
 というか、サンデーをちゃんと読めなかった間でも、足を捕まれて壮大にコケたり、顔に妖怪が張り付いて困ってたりした彼女の姿だけは、何故か鮮明に覚えているんですよ。普段は冷静なお姉さんがドジを踏んで慌てる姿には、人間の無意識下に強く訴える何かがあるのかも知れません。
 学術的なことを言って年上キャラ好きを誤魔化したので次。

2. 鼻魔神の瞳(ブリザードアクセル)

 出会い頭で、いきなり吹雪に愛の告白をした鼻魔神の瞳が美しすぎます。
 なんてキレイな眼をしてやがる…(感想?)

3. 桂ヒナギク(ハヤテのごとく!)

 「結界師」の黒芒楼メンバーにも困りましたが、しばらく見ない間に「ハヤテのごとく!」に新キャラっぽい人がわんさか出てきていたのにも困りました(困るのか)。
 というか、本当に学園編をやっちゃってますよこのマンガ。ナギとハヤテのドキドキお屋敷引きこもり型マンガから、ついに本格的に脱却ですか? 1萌えキャラ/週のペースで女性キャラをどんどん増やしていき、いずれはハヤテが何処へ行ってもモテモテになるハーレムマンガ体制を盤石になさるおつもりですか? さすがです畑先生!(「こわしや我聞」に出て来る眼鏡秘書の千紘ちゃんっぽく)

 そんな畑先生の野望の一翼を担うものと思われる桂ヒナギクさんですが、ハヤテに「私のことはヒナギクって呼びなさい」とお願いする時のポーズが実に絶妙(むしろ巧妙)で、その筋の方々の感じるツボを刺激したことはおそらく必至。このままサブレギュラーになれれば、普通に人気が出そうなキャラだなあと思います。
 彼女を活かすためにも、ハヤテはこの学園の生徒になるべきですね。もちろん女装して(もちろん?)。

 あと毎回思うのですが、このマンガのサブタイトルとトビラの煽り文句を考えている人は。今週の「現在が大事だ! 現在を守ろう! 世界を革命しない力! とりあえず現状維持からだ!」は、これからの人生の座右の銘の一つにしたいくらいのスマッシュヒットでした。この後ろ向きなところが、今の私にピッタリです。
 ここまでトビラが必要以上に面白いマンガは、週刊連載ではチャンピオンの「がんばれ酢めし疑獄!」以来かも知れない。

4. ひき逃げアタック(こわしや我聞)

 このネーミングセンス! そしてこの負けっぷり!
 さすがです若様!(眼鏡秘書の千紘ちゃんっぽく)

 才蔵が負けることは読者の誰しもが判っていたことではありますが、ここまで噛ませ犬に徹してくれると、むしろ清々しいです。サンデー超増刊連載時代は彼が我聞にとって最大最後最強のライバルキャラだったことなんて、今じゃもうきっと誰も信じてくれないに違いありません。
 さらば才蔵(勝手に)。

参照:ひき逃げアタックをGoogleで検索

5. たいへんに男らしいリーゼさん(からくりサーカス)

 「私は〈猛獣使い〉! 獣に喰われ、路傍に屍をサラすが本望!
 「マサルサンを、助けるタメにワタシは来タンダ!

 今週の「からくりサーカス」におけるリーゼの台詞回しには、「覚悟のススメ」の零に宿った英霊達の名台詞「私は軍人! 安らぎは受け取らぬ! 覚悟の居るあの荒れ果てた世界に、安らぎをもたらすのだ!」にも似た迫力を感じます。天国で割腹しかねない勢いです。
 こんなノリで迫られたら、そりゃ猛獣たちも「その心意気や見事なり! 戦士と認める!」とリーゼを主と認めざるを得ないでしょう。

 特に、最後のコマのユニコーンに乗ったリーゼの格好良さは異常。こんなに格好良くユニコーンを乗りこなす女性を見るのは初めてですよ。ユニコーンなんて乙女チックな動物をも漢の乗り物に変えてしまう、リーゼロッテの心意気や恐るべし!(そういうマンガだったっけか)

番外.「いでじゅう!」最終回

 サンデーをちゃんと読む暇がなくて何が一番残念だったかと言えば、クライマックスに差し掛かった「いでじゅう!」をちゃんと楽しめなかったことに尽きます。
 後で一ヶ月分のサンデーをゆっくり読み直して復習しよう…

 今週の最終回では、藤原が黄金水をバラまいてたところにグッと来ました。これって、彼が第一話で空中を浮遊しながら黄金水をバラまいてたオチへのオマージュですよね。オマージュ。「Webサンデー」のいでじゅう紹介ページですら読めない第一話への。
 初めて第一話を読んだ時は「たいへんなマンガが始まっちゃったー!」と思ってましたが、結果的にサンデーを代表するラブコメマンガにまで成長したんですから大したものです。すっかりサンデーの次世代を担う逸材へと成長した、モリタイシ先生の次回作に期待します(フォロー)。

Posted at 00:00 in マンガ::週刊少年サンデー

2005/06/23

絶チル反応と雑感

  • 「絶対可憐チルドレン」新連載正式発表に対するネット上の反応集
  • 今現在の「絶チル」に対する自分の雑感
    • もし短期連載版の最終話で掲げたテーマを描ききることができたら、椎名高志先生における「絶対可憐チルドレン」の存在は、田中ユタカ先生における「愛人」みたいな、『この作品にその作家の持てる才能を全て注ぎ込んだ代表作』級の作品になり得る
    • というか、それくらいの覚悟がないと、このマンガのテーマは描けないんじゃないか
    • しかし一歩間違えれば、和月伸宏先生における「武装錬金」みたいな結果になりそう
    • なりそう
    • かつて駒木博士が「武装錬金」に対して感じていたという、『非常に大きな可能性を秘めていながらも、最終的には可能性だけで終わらせてしまいそう』って感覚がコレなのか
    • 先生、「光は絆だ!」とか姫矢(ウルトラマンネクサスに変身。現段階で行方不明)みたいなこと言ってるし
    • 死ぬ気だ
    • ただ「絶チル」には、読み切り版でプロトタイピングを行い、それを一度破棄した上で短期連載版を新たに再構築、更にそれに基づいて連載版を構築したという、通常ではあまり見られない工程を経ている特徴がある
    • 最初にプロトタイプを作ってインターフェース(=主要な登場人物)を確認し、そこで生まれた成果物に対する要求を踏まえた上でフレームワーク(=世界設定やストーリーなど)を新たに構築するやり方は、ソフトウェア業界で「反復型開発」と呼ばれてる開発手法に少し似ているのではないか
    • 実際に動くソフトを顧客に見せ、そこから得た反応を即座にフィードバックしてリリースするサイクルを繰り返し、システムをブラッシュアップさせていく――という反復型開発の利点を、「絶チル」も享受していることが期待される
    • 実際、短期連載版からどこがどう変わったのか。楽しみだ
    • でも、やっぱり「第一話」を3回も描くことになっちゃったのは大変だよなあと思った(おわり)
Posted at 00:00 in マンガ::絶対可憐チルドレン

マリみて感想・妹オーディション

マリア様がみてる・妹オーディション前半のあらすじ:

 『黄薔薇のつぼみ』の中目録を持つ島津由乃は、秋になってもまだ妹を見つけられないでいた。

 「山百合会の看板に泥を塗られ申した!」
 「一刻も早く妹を見つけねば! まごまごしていると江利子さまが嘲笑いはじめ申す!」
 「物笑いになってからでは遅い! 一度潰れた面目は二度とは戻りませぬゆえ!」

 「一応の妹を立てる

 私の頭の中では何故か「シグルイ」と「マリみて」が不可分の関係になっているため(理由)、シグルイ4巻を購入した直後、不覚にもまだこのサイトで「妹オーディション」の感想を書いてないことを思い出しました。なので今更ながら書きます。
 もうすぐ次の新刊「薔薇のミルフィーユ」が発売されるので、次刊への期待も込めて。

(一応注意:以下は「妹オーディション」のネタバレをバリバリ含みます)

 「妹オーディション」の表面的な主人公は島津由乃なのですが、の主人公はやはり福沢祐巳。
 そんな巻でした(感想)。

 福沢祐巳というキャラは、物語の焦点が「祐巳の妹は誰になるのか」という点に移った時期(「涼風さつさつ」以降)から、「仲間のことになると気が利くけど、自分のことになるとまるっきり鈍感」というキャラクター性を持つようになります。
 この巻は、彼女のそんなキャラクター性が、余すところなく発揮されていました。

 まず前者の「仲間のことになると気が利く」ポジティブな側面に関しては、茶話会に参加して来た内藤笙子に対して「彼女が求めているものは、山百合会ではなく武嶋蔦子だ」ということを直感的に見抜き、この二人を掛け合わせるために様々な策を講じて暗躍した、物語後半の活躍が強く印象に残ります。
 また、ミスをした下級生にミスを指摘しつつ的確なリカバリー方法を指示したり、結局落選した妹候補達にフォローを入れ、彼女たちの今後の山百合会に対するわだかまりを軽減する努力をするなど、下級生に対して細やかな気配りができるようになったことを読者にさりげなくアピールしている点も、小さい部分ではありますが見逃せません。

 これらは、彼女が『紅薔薇さま』として生徒達をまとめる能力を既に有しつつあることを、端的に示していると考えられます。
 由乃の妹となるべき運命を授けられた少女・有馬菜々が中学三年生であったことから推測できるように、「マリア様がみてる」という物語は彼女たちが「薔薇さま」と呼ばれる立場になった以降も継続することがほぼ確実な情勢なのですが、そういう意味でも「福沢祐巳は下級生に人気がある」という(これまでは単に文章で説明されている程度だった)設定を補強し、彼女がいずれ最強の薔薇さまと呼ばれるだけの才覚を持つことを印象付け、将来の更なる成長を読者に期待させる意味合いもあったのかも知れません。
 かつて水野蓉子が夢見た「一般生徒で賑わう薔薇の館」を実現できるのはおそらく祐巳だけですし、彼女ならおそらくそれを成し遂げてしまうでしょう。「マリア様がみてる」には山百合会というソロリティを舞台にした学園物語という側面を持ち合わせていますが、その物語に『ゴール』があるとすれば、そのうちの一つは間違いなくこれになるのではないかと思われます。

 その一方、「自分のことになるとまるっきり鈍感」というネガティブな側面については、祐巳にすっかり恋い焦がれるようになってしまった松平瞳子の苦悩という形で、より明確に現れて来ています。

 祐巳が「自分の妹候補」を探すために茶話会を開いたという事実は、瞳子の目には「祐巳は自分を妹候補として特別視していない」サインとして映ったはずです。彼女はこのサインに対し、茶話会への参加をかたくなに拒否するという形で応えました。
 見かねた乃梨子が遠回しな表現で「茶話会を開くことが瞳子にとって何を意味しているのか」を祐巳に伝えたのですが、鈍感な祐巳には全く届かず、逆に瞳子の無念を想った乃梨子が涙を流す羽目に。

 祐巳は、これまで瞳子に対して『優しく』接して来た結果、彼女が自分に対してどんな感情を持つようになったのか、まったく気付いていません。というか、今の彼女ではそのことを想像すらできないでしょう。誰にも分け隔てなく優しさを振りまけられるところが祐巳の長所ではあるのですが、それ故に祐巳との「二人だけの特別の関係」、すなわち姉妹関係を望む者にとっては、その優しさが自分だけに向けられたものではないことを妬ましく感じるはずです。
 自分にとってその人は特別で、その人も自分を特別な人として見て欲しいのに、その人から見れば自分は特別でも何でもない。その人の優しさはその人自身の中から来ているものに過ぎず、決して優しさを向ける相手が自分だからではない。それが判っているが故に、優しくされるのが辛い。それが今の瞳子の状態なんだと思います。
 あの瞳子をここまで悩ませるだなんて、祐巳ちゃんもすっかり罪作りな女になっちゃいましたよねえ。

 まもなく刊行される「薔薇のミルフィーユ」は、本の構成が各薔薇ファミリーを主人公にした短編が一話づつ、合わせて三話の構成になることが既に告知されていますが、これはあのレイニーブルー」と構成が全く一緒であり、ファンの間からは「次の巻は、瞳子にとっての『レイニーブルー』みたいな位置付けの話になるのではないか」と噂されているとかいないとか(どっちだよ)。
 「妹オーディション」でストーリーが大きく進展した後だけに、どんな話になるのか楽しみです。

 とりあえず今の段階で確実に言えることは、今度の夏のコミケで「脱ぎかけ制服な格好で『撮って撮って』と蔦子に迫る笙子の姿を描いた同人誌」が必ず出てくることですね。見つけたら買います。勿論、乃梨子×瞳子本も見つけたら買います

マリア様がみてる ―妹(スール)オーディション
今野 緒雪 ひびき 玲音
集英社 (2005/04/01)
Posted at 00:00 in 本

2005/06/22

2005/06/22のメモ

_[サンデー][椎名高志][絶対可憐チルドレン] 『完成原稿速報050621』 [関連情報(2件)]
http://www.ne.jp/asahi/cna100/store/news/050622/050622.htm

念願の企画「絶対可憐チルドレン」いよいよ解禁です。週刊少年サンデー33号から連載スタートします。
ついに正式発表。楽しみです

Powered by MM
Posted at 00:00 in メモ

2005/06/19

連載開始までのタスクリスト

 「絶チル」の読み方って、「ちる」じゃなくて「ちる」だったのかYO!(挨拶)

 国内ネット世界における知の集約機構たる『はてなキーワード』に、自分の常識を否定された深沢です。
 気分はマイノリティー。

 椎名先生のサイトで「絶対可憐チルドレン」の制作が進行していることが告知され、また週刊少年サンデーの方でも連載が入れ替わる兆候が出てきたことで、いよいよ「絶チル」の連載開始が現実のものとなりつつあります。
 いやまあ、もう2年間も待たされているので、仮に夏に連載が始まらなくても一向に構いませんが(ドクロ)。

 一応ここはファンサイトなので、連載が始まったら「絶チル」に関する特設ページみたいなものを作ってみようと思っています。以下、連載までにやりたいことリスト。

■感想掲示板の設置

 ファンサイトの義務なので(義務?)。読み切り版短期連載版で使った掲示板ではなく、現在ここの掲示板で運用している自作のblosxom掲示板化プラグインを使ったものを(運用テストを兼ねて)設置する予定です。

■Wikiの設置

 データベース作成用。各話のあらすじやキャラクター紹介なんかをオンラインで作るためには、ブログや掲示板ではなくWikiでやるのが一番てっとり早いのではないかと思ったので、設置を検討しています(YukiWikiを評価中)。
 問題は、私がWikiを使ったことがほとんどないことなのですが。何とかなるモノなのか?

■「絶対可憐ブロギング」機能拡張

 絶チルに関するブログのエントリを自動的にかき集める、「絶対可憐ブロギング」(略称:絶ブ)。個人的に重宝してます。
 以下、現在考えている変更点:

  • 配色やレイアウトの見直し

     今の配色はBlosxom Starter Kitのデフォルト設定のままなので、せめて配色は「絶チル」っぽくしたいところ。
     読み切り版のロゴなどから推測するとこのマンガは「青・赤・黄」の三色をイメージカラーとしているみたいなので、それをマネする方向で(安直)。

  • データ収集源となる検索サービスの追加
  • 椎名百貨店の原稿速報や「絶ブ」で拾ったURLが、ソーシャルブックマークサービスでブックマークされているかどうかチェックする機能

     はてなブックマークdel.icio.usMM/Memoなど、最近話題になってるソーシャルブックマーク系のサービスは「今、どんな事がネットの注目を集めているのか」を簡単に把握するツールとして極めて有用ですので、もしここで「絶対可憐チルドレン」関連の話題が拾われるようになれば、「絶ブ」の情報収集対象にしようと考えています。
     自分もMM/Memoとか使っているので、積極的に拾うようにして行きたい。

 あと、「嘆願書」は連載が正式発表された時点で投稿を締め切ります。ご了承下さい。

 仕事の方はようやく落ち着いてきたので、マンガの感想とかも、できれば今週からぼちぼち復活したいと思ってます。

 最近では、「さよなら絶望先生」の面白さが異常。赤松イズムに支配されたマガジンに単身乗り込み、「敵」の得意分野である美少女わんさかコメディーを己の作風を活かしつつ正々堂々とやらかし続ける久米田先生は、やっぱり大物だと思いました。

Posted at 00:00 in 更新情報

2005/06/15

2005/06/15のメモ

_[サンデー][ハヤテのごとく] 『 (仮)日記 II: ポスター話。』 [関連情報(1件)]
http://d.hatena.ne.jp/takakari/20050615#p1

「書店員のたわごと」のたかさんによる、「ハヤテのごとく!」2巻発売記念ポスターの紹介。でかそう。
わずか2巻目にしてこの優遇のされっぷりは凄いと思った

Powered by MM
Posted at 00:00 in メモ

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