2004/10/26

■マンガ雑誌としてのてれびくん

 この前「ウルトラマンネクサス」を初めて観ました。聞きしに勝る暗くハードな雰囲気のドラマだなあという印象。確かにこれは、これまでのものとは違いますね。
今度のウルトラマンの売りは「ネクサスジェネックスはメタフィールドで戦うぞ! 敵をメタフィールドにとじこめて、いっきうちの戦いをいどむのだ!」(てれびくんより)ということなのですが、ドラマの雰囲気が全体的にシリアスな為か、味方もなくたった一人の力だけで異世界で敵と戦うウルトラマンの姿を、より「孤独の巨人」っぽく感じさせることに成功していると思います。

 あと個人的には、ウルトラマンや怪獣を見てしまった警官に対して、地球防衛隊な組織所属(TLT)の女性が「あなた達は何も見なかった! これが現実よ!」とか高飛車なこと言いながら携帯電話みたいな記憶抹消装置(メモレイサー)を光らせるシーンに、かなりグッと来てしまいました。
 やはり宇宙人モノには記憶抹消装置がお約束っていうか、やっぱりああいう「MIB」みたいなのをみんなやりたくてやりたくて仕方がないんだなと思いました。

 アレのおもちゃが欲しいです(真顔で)。

 そんな感じで、また今月も「てれびくん」を買ってしまいました。
 前回は「てれびくん」が如何に真のジャーナリズムを体現している優れた情報雑誌であるかについて書きましたが、今回はマンガ雑誌として「てれびくん」を読むことについて、ちょっと考えてみました。

 「てれびくん」11月号に載っている記事にはマンガ系のものが5~6本ありますが、我々のような年齢の人が普通に「マンガ」として読める部類に属するのは、このうちの2本(「仮面ライダーブレイド」と「マシンロボ」)だけです。
 残りは幼児向けにチューンされた内容のポケモン4コママンガや、マンガの中にパズルや迷路などが描かれて遊べるようになってるライダーとデカレンジャーのコラボレーションマンガ(ちょっと前のジャンプに載ってた「ボボボーボ・ボーボボ」みたいなノリを想像して下さい)とか、来月号の付録を紹介している妙にテンションが高い次号予告マンガとかそういう系統なので、これらはちょっと「マンガ」とは違うかなという感じ。

 また、載ってる「マンガ」の中身も、基本的にページ数が少なく(8~10P程度)、対象年齢も低い(この雑誌の読者のほとんどは6歳以下です)こともあってか、「マンガを読ませる」というよりは「キャラクターを格好良く見せる」方に徹底的にチューンされている印象を受けます。

 基本的に「てれびくん」は、それ単体で読んで楽しむタイプの雑誌ではなく、子供向けの特撮番組やアニメ番組の副読本としての位置付けにあると定義できます。つまり、「コレを読んでおけばもっとヒーロー番組が面白くなるよ! あとオモチャも買って遊んでね!」と番組を盛り上げるスタンスで雑誌全体が作られていると思われます。
 徹底的に贔屓の球団を応援しまくるスポーツ新聞と基本的な編集方針は一緒である、と書けば判りやすいでしょうか。

 「てれびくん」は基本的にそういう雑誌なので、そこに掲載されるマンガもまた存在意義は同様だと思われます。少ないページ数、極端に偏った読者層、原作付き作品である故の制約といった限定された状況の中で、子供達にその作品をより好きになって番組を楽しんでもらうために、原作の持つテクストを表現する必要があるのです。椎名氏は「ほとんど俳句を作るのにも似た極限のネームづくり」と表現してましたけど、おそらくこういう雑誌向けにマンガを作るというのは、少年向けや青年向けとは全く違う特有のセンスを要求されるんじゃないと思います。
 逆に言えば、そういう制約の中で、原作の持つテクストのどんな部分を抽出してマンガにするのか? という部分こそが、幼児向けマンガにおいて作家性を感じることができるポイントになるのかも知れません。

 例えば、椎名氏は「ネクサスの持つ神秘性」を表現するために「汗とか怒りマークとかの漫符を使わない」と述べてますが、「ネクサス」と入れ替わる形で連載が終了した「仮面ライダーブレイド」(坂井孝行氏作)では、ライダー達の感情を表現するために結構な頻度で漫符を使用していたりします。
 これはどっちが良いとかいうものではなく、読者である子供にその題材を楽しんでもらうためにはどうしたら良いのか、という表現方法の選択の問題であると言えましょう。

 そういう意味でも、椎名ネクサス目当てにこれから「てれびくん」を読もうとするホンモノな方々は、椎名氏が原作をどんな形で(パロディではない、本物のウルトラマンとして)マンガにするのかを楽しむ視点を得るためにも、まずは原作の「ウルトラマンネクサス」を見て内容を理解しておくことをお勧めしておきます。

 しかしこう、幼児向け雑誌を何度もマジメに読むと、独特のトリップ感が味わえてヤバいですな。
 帰って来られるでしょうか自分

2004/09/25

■てれびくんレビュー

 「絶チル」の三人組を「怒首領蜂大往生」のエレメントドールに例える訓練!(挨拶)

 パワー強化型超能力者の薫はやっぱりショーティアでしょうか(と言われても)。
 深沢です。

 先日椎名先生のサイトの完成原稿速報が更新されていましたが、今回は我々のようないい歳した独身男性の読者にとってはかなり重要なことが書かれてました。

 まあ、とりあえず「絶対可憐チルドレン」はあまりに出来が良かったので今後のことは個人的にはそれほど心配してませんし、次号(10/5発売)のアッパーズに掲載される「蜘蛛巣姫」も、主人公が椎名先生得意の人外女性キャラなので大丈夫でしょう。
 最大の問題は、「てれびくん」で連載されるネクサスのコミカライズです。というか、「てれびくん」という媒体そのものが問題です。

 ネクサスに関しては、まず設定からして相当これまでのウルトラマンとは異質(何となく「クウガ」以降の仮面ライダーを連想させます)であり、またスタッフには「板野サーカス」で有名な「超時空要塞マクロス」の板野一郎氏が参加するという情報もあるなど、かなりの意欲作な雰囲気が漂っています。特撮ファンの間でも前評判高そうな感じ。
 いわゆる「平成ウルトラマン」のノリに全くついて行けず、当時は裏番組の「YAT安心!宇宙旅行2」を観て丹下桜ヴォイスに萌えていたウルトラ負け組な私ですら、ちょっと気になる番組ではあります。

 そして、そんな「ネクサス」のコミカライズをあの椎名高志氏が担当するというのは、ファンならずともマンガ好きな人間の観点からして興味深いところ。
 幼年向けテレビ雑誌というのは、とにかく「子供がその番組を見て面白がれるように、徹底的に盛り上げてやるぜ!」みたいな編集方針で作られているので、これまでの椎名作品には見られなかったハイテンションなマンガになるんじゃないかと期待できます。

 ただ、我々のようないい歳した独身男性の椎名ファンにとって、問題になるのは掲載誌。
 基本的に「てれびくん」を買うのは子供がいるご家庭か、あるいは相当の特撮マニアというイメージがあるので、どちらにも該当しない人にとって「てれびくん」はちょっと敷居が高い、というのが普通ではないのでしょうか。

 という訳で、近所のスーパーに今月号が残っていたので、どんなものか試しに買ってみました

てれびくん表紙
むしろ「買ってしまいました」が正しい

 眠田直氏がかつてフィギィア王に掲載したコラムには「これらの幼年テレビ雑誌の魅力は、(世間一般とは全く違う価値観で物事を報じる)『バーチャル・ジャーナリズム』にあると思う」とありますが、誌面を読んでみるとまさにそんな感じがします。

 実際、この本の記事は「新世代ライダーがブレイドたちにちょう戦!」「デカ戦士特捜パワーランキング! 得意の技でアリエナイザーをたおすぞ!」「地球の平和はジャスティライザーにまかせたぞ!」とか、そういう幼年誌独特のノリで全てが支配されており、読んでいるうちに頭の中が『この世の中は全てスーパーヒーロータイム的な世界観でできているんじゃないのだろうか?』と錯覚してくること請け合い。
 「てれびくん」を読んだ後に録画していたデカレンジャーを見直すと、何だか妙に面白く思えて来てしまうから不思議です。現実への認識を一変させてしまうこの威力! これがジャーナリズムの真の力なのか! と感心した次第。
 「てれびくん」を読んでジャーナリズムを知る私。その名は私。

 また、入手した「てれびくん」10月号が発売されたのは9月1日ですが、この雑誌では既に「ネクサス」の詳細な情報が掲載されています(「ネクサス3大ひみつ大公開!」という大げさなタイトルで)。
 ホームページはまだ簡単な概要が掲載されているだけの状態ですが、一方「てれびくん」ではデュナミスト(ウルトラマンに変身できる能力を持つ者のこと)が持つアイテムの紹介、ネクサスの二種類の形態の全身写真、そしてウルトラマンが光線技を出すときのポーズの詳細な説明と、番組を観るにあたってファンが知っておくべき情報がコンパクトにまとめられており、たいへん参考になりました。

 「人類をおびやかす恐ろしい敵スペースビーストと戦うウルトラマンネクサス! 新しいウルトラ戦士ネクサスの、変身のひみつや体のひみつ、光線技のひみつを『てれびくん』がいち早く、しらべたぞ!」という売り言葉に、嘘偽りはまったくありません。
 詳細な情報をどこよりも早く! これがジャーナリズムの真の力か!(またか)

 あとは、子供向けアニメの情報も当然載ってます。「金色のガッシュベル!」とか。
 アニメについては、基本的な記事の構成は普通のアニメ雑誌とそれほど変わらない印象です。「ガッシュ」の場合、先々週に放映された「キッドがベルギムE・Oを倒して魔界に帰る」回のエピソードが特集されていました。

 このエピソードは、ナゾナゾ博士の下で成長したことを態度で証明するキッドの雄志や、過去に孫を失った心の傷を持つ博士がキッドによって癒される様子、そしてキッドと博士の感動的な別れのシーンなど見所が多く、それ故にファンにとっては評論しがいがある名エピソードと言えるでしょう。
 ですが、そんなエピソードも、真のジャーナリズムを体現する「てれびくん」の手にかかれば

 「ベルギムE・Oをやっつけた!

 というたった一つのアオリ文句に集約されてしまいます。
 いくら感傷的なエピソードであろうが、子供にとって一番大事なことは、キッドが凄い大技でベルギムE・Oをやっつけた、という圧倒的な事実を突きつけ、納得させることなのだ! 事実の前には机上の評論など無意味! それが真のジャーナリズムなのだ! ということを訴えているように思えるのは、私の気のせいでしょうか(気のせいです)。
 なお、ちゃんとキッドと博士の別れのこともフォローされているのでご安心を。

 他にもグッズ関連情報がやたらと充実していたり(雑誌の趣旨からすれば当然ですが)、「てれびくん」購読者しか手に入らない限定グッズが買えたり、週刊少年サンデーにも出てくるゲーム記事担当のナカムー氏が「てれびくん」ではやたらいい男になってたりと色々見所があり、思っていた以上に楽しめた気がします。
 というか、努力次第でいくらでも突っ込んで面白がれる雑誌だと思いました。

 購入する覚悟ができました。(←マジで?)

 あと、アッパーズのイラストは、ブルマ女子の絡みも良かったですが、それ以上に「運動会ってホント嫌いでした。どうでもええやん」という椎名氏の投げたコメントが一番ステキでした。
 例えマンガの中ではマッチョなキャラばっかり出そうとも、相変わらず体育会系大嫌いなスタンスに変わりはないようで一安心。これからもがんばって下さい(体育会系嫌いを)。

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