2005/09/01
■「MAJOR」の表紙で媚びを売る清水に哀れみを覚えたサンデー39号感想
- 「ウンコー!」(金色のガッシュ!)
- 「あの二人に誘惑されたら前屈みにくらいなるわよ」(絶対可憐チルドレン)
- 「だって小学生とつきあうなんて許されないだろ」(道士郎でござる)
- 最後のページで我聞に飛びつく桃子(こわしや我聞)
- 妙に格好いい幹人(クロザクロ)
- 番外:コミケで入場待ちをしていた畑先生
□
1. 「ウンコー!」(金色のガッシュ!)
今週の「ガッシュ」におけるウンコティンティン様の品のないギャグの数々は、明らかに子供向けにチューンされたものなのですが、でも仕事や何かで疲れ切っている今の自分の頭には、この程度のギャグがとても心地よく響きました。「ウンコー!
」と叫びながら武器を投げるウンコティンテイン様の勇姿には感動さえ覚えます。私も一緒に叫びたいです。
ですので、今回のエピソードがアニメ化された暁には、バンダイは股間に装着してウィンチを引っ張るとはねをのばして「フェニックス!
」と叫ぶアヒルを商品化して販売するべきです。うんこやちんこが大好きな、フロイトが言うところの肛門期真っ盛りのお子様は間違いなく大喜びしますし、何より全国のオレみたいな疲れたサラリーマンのお父さん達にも大好評なはずですよ! 是非!
2. 「あの二人に誘惑されたら前屈みにくらいなるわよ」(絶対可憐チルドレン)
紫穂の毒舌を集めたコンテンツを作ったら面白いんじゃないかと思った(感想)。
それはともかく、今回は薫のお話。彼女が「横島の妹」とまで称されるくらい性教育的観点から見てアレな感じに育ってしまったのは、身内の家族にも大きな原因があるのではないか? と推測させてくれる回でした。自分が心から信頼している数少ない男性に対して、姉や母が前屈み必死な態度でアプローチしている現場を何度も見せられたら、そりゃまあソッチの方にもグレるのも仕方ないかなあという感じ。
ただまあ、家族の関係そのものは極めて良好な様なので、それほど深刻に捉える必要はないみたいですが。
とりあえず今回でチルドレン達の家庭環境に関しては一通り説明された訳なんですけど、どこも多少の問題はあるものの、基本的にはみんな家族を愛しているいい子ばかりであり、今のところは彼女たちが将来「人類にとっての悪魔」に成長する程の要因を抱えているようには見えません。
ということはアレですか。このマンガは、これから彼女たちが成長するに従って冷たい世間の風に吹かれてどんどん荒んでいき、やがては「人間の性、悪なり!」と悟ってデビル覚醒をして世界を滅ぼしてしまうまでの過程を描く、ピカレスクかつノワールなディストピア少年マンガになるということですか? コミックス10巻が出る頃には、我々は今サンデーに連載されているストーリーを読み返しては、「この頃は、この子達も素直でかわいかったんだけどなあ…
」と遠い目をすることに? 楽しみだなあ!(最悪)
次回から始まるであろう新展開に期待します(フォロー)。
3. 「だって小学生とつきあうなんて許されないだろ」(道士郎でござる)
「道士郎でござる」の出版社が、小学館じゃなくて茜新社だったら許されると思うんですけどね!(まちがったソリューション)
個人的には、今回の町内会見回り編で池内君(特徴:鈴カステラ頭)が正式にレギュラー化したのが嬉しいですね。どんな出来事でもヤンキーが好きそうな頭の悪い伝承と化してしまうしてしまう彼の言動は、毎回自分の笑いのツボを刺激してくれるので大好きです。オレも学生時代にこういうダメなセンスを身に付けたかったよ! と思うことしきり。
オレも今後は彼のことをガイコツ君呼ばわりしようかなあ(身内意識)。
4. 最後のページで我聞に飛びつく桃子(こわしや我聞)
マンガには描かれていませんが、このコマの桃子からは間違いなく耳と尻尾が生えてます! 私にはハッキリと見えます! つうか普通見えるだろう! 見えないとおかしいだろう!
ついに私も、桃子を通じて何かに覚醒してしまったみたいですよ! 目覚めさせてくれてありがとう藤木先生!
とか言いながら、一番グッと来たシーンは、國生さんのバインダーを使った変な体術投げで凪原を浮かせて我聞の打突で吹き飛ばす、夢のGHKコンボだったりするんですけどね。例え変なモノに覚醒してもその辺はわきまえているのでご安心を!
5. 妙に格好いい幹人(クロザクロ)
「傀牙の種を捲いている張本人が意図すればね
」
「また僕を怪物扱い?
」
何だか、幹人が妙に格好良くなってるよ! 君は誰だ!
こんなの、先週までパンツ1枚の姿でウロウロしてた幹人じゃないよ!(うるさいよ)
これはつまり、「上位種」との戦いを何度も経験し、「みんなを守りたい」という意識が芽生えたことで幹人そのものの内面が成長を遂げた結果である、と好意的に解釈するべきなのでしょうか。あの萩の服を着たから性格まで変わっちゃった、とかそういうアレじゃないよね?
ストーリー的には、傀牙の軍団を結成して操る謎の結社っぽいのが出てきたりして、いよいよ物語が佳境に差し掛かってきたというか、「トガリ」の終盤みたいな臭いのする雰囲気になって来た感じ。これからもがんばってください(フォロー)。
番外:コミケで入場待ちをしていた畑先生
「まぁ、僕も有明で熱射病になりかけましたが。」(Webサンデー・まんが家BACKSTAGEの畑先生のコメント)
先生…
畑先生くらいの大物ともなれば、自分でサークルを作って前日に急遽作ったコピー誌を持ち込んで参加するなり、知り合いの同人作家のサークルのスタッフとしてチケットを入手して悠々と入場するくらいのことは可能なはずなのに、あえて一般参加者として5時間も炎天下の中で並んで待ち続けてしまう奥ゆかしさに、我々はもう萌え萌えであります! なんていい人なんだ畑先生!
お母さんを大切にしてあげて下さい(フォロー)。
■少年誌とレイザーラモンHGの相性の良さに感心したサンデー40号感想
- 「大切なものを失って少し大人になった、光と四姉妹の物語。」(クロスゲーム)
- 「皆本もやっぱりその方が安心!?」(絶対可憐チルドレン)
- 「罪を憎んで、フェチを憎まず!!」(あいこら)
- 「ああっ、俺に妹ができた。小学生の妹。」(道士郎でござる)
- 真っ赤になった國生さん(こわしや我聞)
- 番外:今週のMAJOR
□
1. 「大切なものを失って少し大人になった、光と四姉妹の物語。」(クロスゲーム)
サンデーの表紙に書かれている宣伝文句がコレなのですが、「四姉妹」と言いながら既に一人足りてないところに切なさを感じます。
第一部は「まさかあのあだち充先生が、妹萌えな美少女わんさかコメディーを!?」と一方的な期待を抱かせた(オレに)挙げ句、メインヒロインと思われていた次女の若葉が突然死亡するという、かつて「タッチ」でカッちゃんを交通事故に遭わせたあだち充先生でなければ到底許されないような展開を我々に食らわせ、その恐ろしさを改めて植え付けることに成功した「クロスゲーム」。
そして今週から始まった第二部ですが、今度のヒロインは三女の青葉である様子。彼女は「光のことが嫌い」と紹介されているものの、第一部では主人公の光に興味があるような素振りもたまに見せていた記憶があります。しかし当時は光と姉の若葉があまりにもラブラブであったためか、彼女がこの関係に割って入ることはありませんでした。
その若葉が亡くなってから四年という長い月日が流れた今、果たして彼女は光にいかなる感情を持つようになったのか。いずれは彼に対して好意を示すようになるのか、それとも(今の光がそうであるように)若葉の影から逃れられず、光に対して無視した態度をとり続けるのか? この辺が、「クロスゲーム」第二部の焦点の一つとなることは間違いないでしょう。
身近な存在の男子に対して素直になることができず、どうしても彼に対して突っぱねた態度を取ってしまう。これってアレですよ。ツンデレですよツンデレ。あのあだち充先生が、ついに美少女ツンデレマンガに手を出す時がやって来たと、つまりはそういうことなのですか? 美少女わんさかコメディーは成らずとも、ツンデレは成るのですか?
主要登場人物にタッちゃん(=主人公)・カッちゃん(=ライバル)・南ちゃん(=ヒロイン)という固定されたロール(役割)を割り当て、この三人が人間関係のバランスを保ちながら微妙な駆け引きを繰り広げることによって緊張感を醸し出す――という、氏独特のスキーム(構造)を盤石なものにした「タッチ」から、20年以上の時が経過しました。今のあだち充先生は、かつての己が組み立てた構造に対して挑戦を続けているのかも知れません。
ツンデレで構造改革を成し遂げようとする、あだち充先生の今後に期待します。
2. 「皆本もやっぱりその方が安心!?」(絶対可憐チルドレン)
超能力を抑制するECMの話題になった時、葵や紫穂があくまで「超能力者対一般人」という俯瞰的な観点でその存在を論じているのに対して、薫はあくまで「自分と皆本」という個人的な問題に置き換えて「皆本もやっぱりその方が安心!?
」と問いかけるシーンが、個人的に印象に残りました。
最強レベルの超能力者であり、良くも悪くも超能力を持っていることがアイデンティティとなっている薫にとって、超能力を否定されることは自分を否定されることと同義であると思われます。それ故、皆本がECMの存在を肯定するということは、皆本が彼女自身を否定したという意味で捉えてしまっても致し方ありません。
「この力、ない方がいいと思ってる?
」と語る薫の不安そうな表情は、彼女が大好きな皆本から自分の能力や存在を否定され、一緒にいられなくなることを何よりも恐れている現れなのではないのだろうか? とか思ってしまいました。
いやもう、薫はホントに皆本のことが大好きなんですねえ。私はそんな薫がもうかわいくて、かわいくて、かわいくて、かわいくて仕方ありません。どうしよう!?(←おちつけ)
3. 「罪を憎んで、フェチを憎まず!!」(あいこら)
「パーツを愛する者なら、そのパーツを持つ者も愛せ!
」
「罪を憎んで、フェチを憎まず!!
」
キター!(AA略)
ついに井上先生が、その本領を発揮してしまいましたよ!
これらの台詞は、真性フェチの変態が主人公である「あいこら」という作品の本質的なテーマそのものを表現する言葉であることは、もはや明白であります。一見するとただの変態の自己弁護にしか思えないようなこれらの台詞が、ここまで読者の心に感動的に響いてしまうのは、作者の井上先生自身が彼等のようなフェティシストの美学というものを心から理解し、敬愛し、それをエンターテイメントとして描くことによって昇華させようとする、固く強く美しい意志があるからに他なりません。
これぞ井上和郎作品の真骨頂! やっぱり井上和郎先生は最高の変態漫画家です!
そして、結果的に真性フェティシストに囲まれる生活を送ることになった、弓雁ちゃんの今後が心配です。
4. 「ああっ、俺に妹ができた。小学生の妹。」(道士郎でござる)
大ベテランのあだち充先生がツンデレに挑んでいる中、同じくベテランの域に達している西森博之先生は既に妹萌えの境地に到達していた罠!(罠?)
わざわざ一話かけてまで早乙女が小学生女子・蓮沼裕美ちゃんのことで悩むエピソードを挿入するということは、今後も彼女がストーリーに絡んでくることが予想されます。次回からは、早乙女と義理の妹を巻き込んだ仁義なきギャング団との抗争劇が始まる予感。
妹萌えに目覚めたヤンキーが何処までやるのか見てみたいと思った(まちがい)。
5. 真っ赤になった國生さん(こわしや我聞)
桃子が登場してから我聞になつくまでの展開はベタ故に面白かったのですが、今回の「これまで全く意識していなかった身近な男の子のことを突然意識し始めるようになっちゃった自分自身に戸惑いを覚えて焦る」國生さんの姿も、またベタ故に面白い展開と言えます。
國生さんは我聞を男性として意識しているのではないか? という描写はこれまでもさりげなく登場して来たのですが、今回ついに國生さんが我聞を「社長と秘書」の関係ではなく「男と女」の関係として捉えるパラダイムを獲得したことで、いよいよソッチ方面で俄然面白くなって来ました。
っていうか、照れ隠しに我聞をバインダー投げしてツンと背中を向けてしまうとこなんて、いわゆるツンデレ娘が照れ隠しで意中の男子をブン殴って「バカー!」と泣きながら逃げるシチュエーションと、構造が全く一緒じゃないですか。これだ! 俺たちはコレを待っていたんだ! と、今頃全国百万人の我聞ファンが握り拳を振るわせて感激の涙を流しているはずです。
これからはきっと、「生真面目だった女の子が男子を意識しすぎてドジっ娘に転落する」という、これまたベタな展開が我々を(そして國生さんを)待ち受けているに違いありませんよ! 楽しみだなあ!
あと、九州に送られると聞いて「ブー」と駄々をこねてる桃子の姿はまるで桜井弘明監督アニメのキャラのようだったので、これはきっと作者の藤木先生が「我聞をアニメ化する時は桜井監督にお願いしたい!
」と考えている意思表示であると思った。
國生さんの声優が能登麻美子になるといいですね先生。
番外:今週のMAJOR
「サンデーを代表する報われない女」でなければいけない清水の苦労がこんなにアッサリ報われるだなんて、あんまりですよ!(感想?)
吾郎って案外押しに弱いタイプだったのね。
2005/08/18
■報われないサンデー女性キャラの座は「MAJOR」の清水に委譲されました(サンデー37・38号感想)
- 「もういいわ。答えだけ教えて?」((絶対可憐チルドレン)
- 「弱っ! 私のハムスター弱っ!」(ハヤテのごとく)
- 服を置いた萩(クロザクロ)
- 辻本退場(見上げてごらん)
- 今週のこわしや我聞
□
1. 「もういいわ。答えだけ教えて?」(絶対可憐チルドレン)
紫穂は既に悪魔だと思いました(感想)。
それはともかくとして、今回の主人公は葵。彼女には『チルドレン唯一の常識人』というアオリが付けられていますけど、立場的には『チルドレン三人娘の長女役』みたいな表現の方がピッタリ来るように思えます。
下の兄弟と一緒に騒いでいるところを親に見つかって叱られた時、今回の葵のように「だってこいつらが――
」と弟妹の狼藉が騒ぎの原因であると訴えようとしても「教えてやってくれ!
(=お前が子供達の面倒を見ろ、の意味)」とすげなく却下され、更に「今、電話中だから静かに!
」と大人の理不尽な理屈で言い負かされて弁解する機会を与えられずに納得できない思いをした経験は、兄弟の一番上として生まれてきた人なら誰でもあるんじゃないのでしょうか。
もっとも自分は弟として生まれてきたので、その辺の心境はよく判りませんが。姉ちゃんゴメン(私信)。
そういう訳で、今回のお話は「親が下の兄弟ばかり気にかけて、自分はかまってもらっていないんじゃないか?」という子供が抱きがちな不安を物語のベースにしている点が面白かったです。
椎名先生のサイトの次回の完成原稿速報には「自分に相応しい作品を作ることが大事
」みたいなコメントが書かれていますが、今回の話は自身も小さい子供を育てながらマンガを描いている「今の椎名高志」だからこそ作ることができたエピソードでしょうね。
あと今回は小泉総理のバッタモノが登場してきましたけど、例の郵政民営化問題で衆議院がちょうどいいタイミングで解散してしまったため、図らずもタイムリーネタに。こういうのも「ツキに恵まれてる」と言うのか。
2. 「弱っ! 私のハムスター弱っ!」(ハヤテのごとく)
「ハヤテのごとく!」のコミックス3巻が発売された日に衆議院が解散したため、次の日の朝の通勤電車の中で周りのサラリーマン達が「9.11衆院選挙!」と書かれた新聞を真面目に読んでる隣で「ハヤテ」の3巻を読むことになってしまって困った人?(挨拶)
今回は「このマンガ唯一の『一般庶民』」である西沢さんが主人公のエピソードでしたが、バックにハムスターのスタンドを出現させた上、「弱っ! 私のハムスター弱っ!」とセルフツッコミまでこなしてしまう彼女は、庶民とは言えどもやっぱりちょっと普通ではないなあと思いました。
そして彼女は立場的には一応ナギの恋のライバルの一人なのですが、どう考えても勝ち目がないところが、私の落ちぶれキャラ萌え属性を刺激して止みません。報われないサンデー女性キャラの座は、「いでじゅう!」の終了によって朔美ちゃんから「MAJOR」の清水さんに委譲されましたが、「ハヤテ」の西沢さんも十分その座を狙える立場にあります。これからも報われない努力を延々と続けて頂きたい。
3. 服を置いた萩(クロザクロ)
あの萩が、延々とパンツ一枚状態を続ける幹人を見るに見かねて着替えを!
サンデーにおける「主人公がパンツ一丁でウロウロしている記録」の更新を阻む気ですよ! 余計なお世話だ!(まちがい)
というか、戦場に赴くというのにわざわざカバンに着替えを入れておくだなんて、随分準備がいいというか何というか。まさか、事前にこういう事態(主人公がパンツ一枚でうろつく事態)を予測していたのでしょうか。萩のカバンはバクさんのカバン並に何でも入ってるなあ(30代未満置いてきぼりネタ)。
4. 辻本退場(見上げてごらん)
結局、“チキンハート”富士丸に順番が回ってこないまま、団体入れ替え戦が終了。ここで修羅場を経験しなかったことが、後々に富士丸君にとってマイナス方向に響いてくる気がするんですけど、まあその辺はいずれ物語の中で取り上げられるのではないかと思います。
何たって「見上げてごらん」は、主人公の了がウィンブルドンの舞台に立つまでを描く、今後10年くらいは連載が続く予定の大河ドラマですからね!(決めつけ)
それよりも個人的にちょっと意外だったのが、入れ替え戦で了と文字通りの血みどろの戦いを演じた辻本がテニス部を退部してしまったことです。彼の攻撃的なプレイスタイルは了にとって学ぶところもあるはずですし、いわゆる「タイマン張ったらダチ」的なヤンキーマンガの理論に基づき、この二人も戦いの後はそれなりにうち解け合う形になるのかな? 辻本って、ああ見えて案外ツンデレキャラかも知れないしな? とか予想していたんですけど、結果は自主退部という形で了に「葉っぱ」の重さをその身で教える結末に。
この作品世界はヤンキーマンガの理論ではなく、極めて厳しい勝負の法則のみで構成されていることを、了にも読者にも知らしめるエピソードでした。
さすが今後10年くらいは連載が続く予定の大河ドラマ! キャラや読者に要求する覚悟の度合いが違いますね!(決めつけ)
5. 今週のこわしや我聞
桃子ちゃんが我聞にズギューンとキちゃった今回の「我聞」の展開は既に様々なサイトで散々ネタにされているので、一週間も出遅れた私としては今更もう何も言うことはありません。今回の桃子編はこのズギューンを描くためだけに企画・構成されたエピソードであると断言できますが、ここまで狙い通りに読者が萌え萌えになって喜んでくれたんですから、作者の藤木先生としても本望でしょう。
今頃先生はきっと、読者から寄せられた桃子萌え萌え~な感想ハガキの束を眺めつつ、片手にワイングラスを持って「ウワッハハハウワッハハハ
」と裏社会の黒幕みたいな笑い声を上げながら勝利の快感に酔いしれているに違いありません。というか、それくらいの価値がある勝利ですよこれは。
しかし本当の問題は、ここまで人気が極まった桃子というキャラを、今後この作品の中でどんな形で活かしていくか? という点にこそあります。桃子をレギュラー化して立派なサンデー随一のツンデレキャラに鍛え上げるか、それとも桃子をレギュラー化して始終我聞にデレデレしっぱなしな緩いキャラに仕上げるのか。作者の藤木先生の今後の選択に期待です。
今回の結論としては、桃子のレギュラー化を希望します。
2005/08/09
■最近読んだコミックスの突発感想
成恵の世界8巻
SFとラブコメとパンツに満ちあふれた、みんな大好き「成恵の世界」の最新刊。
SFマインドはこの巻でも相変わらず健在。この巻の表題作「時台屋の女房」で周囲の世界が徐々に過去に退行していくシーンがジャック・フィニィの「ゲイルズバーグの春を愛す」を彷彿とさせ、個人的にちょっとグッと来た。あと「SHOOTING STAR」は物言わぬ機械と人間が心を通わせる話、というだけで超グッと来る。何を考えているのか判らない機械は常に萌え対象だ。
またラブコメ的な部分も、「時台屋の女房」の超時空レベルの恋愛劇の他、香奈花の微妙な乙女心の変化を描いた「お熱いのはお好き?」、中学生レベルのほのぼのしたエロティシズムに溢れた「トラぱら」と、どれも心に来る良作。
そして勿論「成恵」と言えばパンツだが、この巻では特にバチスカーフのパンツと野球部マネージャーのパンツが印象的だ。SFとラブコメとパンツが高いレベルで融合した面白さがここに。
ここ最近の「成恵」の中でも、かなり完成度が高い巻なのではないかと思った。中学生以上のオタク男子なら必読レベルのクオリティを絶賛キープ中。
サナギさん1巻
四コママンガが衰退傾向にある週刊少年誌界において、「グルームパーティー」「O-HA-YO」「がんばれ酢めし疑獄!」と四コママンガの良作をリリースし続けている週刊少年チャンピオンで現在連載中の四コママンガがコレ。
作者は「酢めし疑獄」の施川ユウキ氏。
表紙や帯はサザエさん系の「ほのぼの四コママンガ」を連想させるように作ってあるが、実際の中身は作者独特の黒みがかったユニークなユーモアセンスに満ちあふれているのが特徴。主人公のサナギさんの笑い声の擬音で一番多いのがよりによって「ゲラゲラ
」であるところが、このマンガのギャグの傾向を端的に表していると思われる。
サナギさんと友達のマフユちゃんの間のどこか歪んだ会話を中心に、常にネガティブな妄想を抱いているサダハル君と彼に強烈な突っ込みを入れる短気なタカシ君、常に物事に対してケチを付けなければ気が済まないリサさん、事ある毎に何かを踏まなければ気が済まないマナミさんといったおかしなキャラクターが、何とも言えない変な味わいを醸し出すマンガが満載。何度読んでも飽きが来ない、優れた「世界」を持つ作品と言える。
ネタ的に何でもありだった「酢めし疑獄」から、「中学一年生の日常会話」に焦点を絞った「サナギさん」に連載が移行したことで、作者のユーモアセンスがより一層際だって来たような印象を受ける。
最近では朝日新聞で紹介されたことで一気にブレイクしたらしく、現在ではかなりの品薄状態になっている模様。まだ入手できる環境に居る方は、今のうちにぜひ。施川氏の出世作「がんばれ酢めし疑獄!!」も面白いのでぜひ。
ヨコハマ買い出し紀行13巻
この巻を読んでいると、なんかこう無性にバイクで走り出したくなって困るよ!(感想?)
あと、この巻は「時間の流れ」を印象付けるようなイメージが強かった印象。一番最後に掲載されている「月の輪」に出てくる『もうふたまわりもでかくなったら また一人が好きになんかもしんねえし
』というおじさんの台詞には、アルファがこれまで経験してきた時間と、彼女が更にこれから経験するであろう長い長い時間を連想させる、深いものを感じさせる。
この巻に掲載されているそれまでの話が、登場人物が時間を経て変化したり成長したりする様子を(地味ながら)描いている話が多かったので、「月の輪」は尚更アルファというキャラクターが置かれている立場のせつなさを象徴するエピソードであったと思う。
このマンガも、長い間に色々と変化しているんだなと感じた。
2005/08/04
■月刊少年シリウスとテレパシー少女蘭
ゲツカンシリウス!(挨拶)
カタカナで書くと西尾維新の小説のタイトルっぽく見えるテスト終了。こんにちは。
講談社から5月に創刊された「月刊少年シリウス」。「コミックと小説の新世代ハイブリッドマガジン
」を標榜、ラノベ大好きな少年少女を狙い撃った雑誌という触れ込みの割には、現段階ではどうも「読めば面白いがひたすら地味」という評価を頂いてしまうレベルの知名度に甘んじてしまっている模様です。
そんなシリウスに現在連載されている、『テレパシー少女「蘭」 ~ねらわれた街~
』(原作:あさの あつこ/漫画:いーだ俊嗣)というマンガが個人的に相当ツボに入ってしまい、居ても立ってもいられなくなってしまったのでご紹介します。
□
このマンガは、『主人公の中学一年生・蘭(らん)のクラスに翠(みどり)という名の美少女が転校して来たのだが、実は彼女はテレパシーやサイコキネシスを操る超能力者であり、蘭に対して「あんたも私と同じ能力を持っている」と告げる』――という導入から始まり、蘭と翠が超能力で街で起こっている不思議な出来事に立ち向かっていくという筋書きの、SF仕立てのミステリーです。
「テレパシー少女」「転校生」「謎の美少女」「ねらわれた街」といったテクニカルタームから推測できるように、いわゆるジュヴナイル小説のテイストがかなり強いです。これを初めて読んだ時は、何だか子供の頃に読んだ「なぞの転校生」や「ねらわれた学園」と雰囲気がどことなく似ているなあ、と思ったんですけど、このマンガの原作となっている小説「ねらわれた街」を調べてみたところ、児童向け文庫の講談社青い鳥文庫に収録されていると知って納得。
「青い鳥文庫」の方では童画家の塚越文雄氏によるイラストが如何にも「児童向け」な雰囲気を醸し出しているのですが、月刊少年シリウスは基本的に西尾維新や田中芳樹の小説が大好きな中高生以上の年齢がターゲットとあって、キャラクターデザインはかなりソレっぽいものにチューンナップされています。詳しくはシリウス公式サイトの作品紹介ページを参照。このイラストだけでやられる人も多いんじゃないんでしょうか。マンガ版の作者のいーだ俊嗣氏のセンスの良さを感じます。
そして何より素晴らしいのが、「なぞの転校生」として登場した翠のツンデレっぷりです。ツンデレ。
彼女は、自分が超能力を持っていることで両親から疎まれるようになって現在は家族と別居しており、それ故に自分と同じ能力を持つ人間を探し求めていた――というバックグラウンドがあり、彼女にとって蘭はようやく見つけた「仲間」だった訳なのですが、でもそういう生い立ちに起因する弱みを見せまいとする意地っ張りな性格が災いしてか、最初のうちは蘭に対して素直な態度が取れません。
本当は仲良くなりたいのに、プライドが邪魔して悪口を言ってしまう。ツンデレで言うところのツン状態です。
しかしそんな彼女も、翠の心情を察した蘭の「ひとりじゃないよ…翠
」という言葉で陥落。人と違う能力を持って生まれ、常にさみしさや絶望に苛まれてきた翠は、その時初めて自分を自分として真正面から受け止めてくれる人に出会えたことを知り、蘭に心を許すようになります。
更に二人の周りで次々と奇妙な事件が起こり、この街が謎の「敵」に狙われていると知った二人は、超能力を駆使して共に戦う盟友状態の関係にまで一気に進展。ツンデレで言うところのデレ状態への移行です。
つまりこの作品は、タイトルこそ「テレパシー少女蘭」となっていますが、「テレパシーツンデレ少女翠」として読んでも十分に楽しめるものになっているのです。ツンデレエスパーですよツンデレエスパー。しかもツンデレ対象は同い年の少女。百合っぽいです。同じエスパー少女マンガの「絶対可憐チルドレン」にすらない要素が満載ですよ!(うるさいよ)
他にも翠は、普段はツンと澄まして綺麗な標準語を話すんだけど興奮すると急に関西弁になって一気に感情を爆発させたり、強力なサイコキネシス能力を持っていながらそれをクラスメートの首筋をサイコキネシスでつねっていじめるという極めて陰湿な使い方をしたりと、歪んだ性格の女性キャラが大好きな自分にとっては、もうやることなすこと全部ツボです。辛抱たまりません。
斯様に萌え萌えなキャラクターが児童文学の世界に存在していただなんてちょっと凄いよ! と思いましたが、でも本当に凄いのは、自社の児童文学の中から少年マンガの原作として立派に通用する作品を見つけ出し、その作品を適切な画風を持った漫画家に託して「少年マンガ」としてのフレーバーを与えることで作品の潜在的な魅力を引き出すことに成功した、雑誌編集者のセンスの良さにあるのではないのでしょうか。
ちょっと大げさな表現になりますが、「テレパシー少女『蘭』」は、「コミックと小説の新世代ハイブリッドマガジン」というこの雑誌の路線を象徴している作品なのではないか、と思いました。
シリウスには、他にも「ぼくと未来屋の夏」(原作:はやみねかおる/漫画:武本糸会)、「夏の魔術」(原作:田中芳樹/漫画:ふくやまけいこ)の小説原作シリーズがありますが、どの作品もかなり良質かつ面白いマンガになっています。漫画界には原作を書ける作家が不足している、だなんてことが言われているそうですが、原作のノベルと漫画を結びつける手法を雑誌の大きな「売り」として掲げた月刊少年シリウスの作戦は、現状の原作不足に対する一つのソリューションとして興味深い事例になるかも知れません。
――というか、ここまで萌えるツンデレがいるのにネット上であまり話題にならないこと自体が、月刊少年シリウスが地味な雑誌の地位に甘んじていることの証明になっている気がしてならないのですが。「テレパシー少女 シリウス」でググっても54件しかヒットしないだなんて何事ですか! こんなに萌えるのに! こんなに萌えるのに!(連呼) もっとがんばって売り込め講談社!
今本屋で売ってるシリウス9月号には、翠が蘭に対して「ツン」から「デレ」に状態遷移する決定的なイベントが収録されているので、そういうのが大好きな方はチェックを! せめてこのマンガがコミックス化されるくらいまでは雑誌が存続してくれないと困りますからね!(ドクロ)
あと、来月号からは「暗号名はBF」の田中保左奈先生の新連載「乱飛乱外」も始まるので、とりあえずここのサイトを覗いているようなタイプの人はチェックしてみる価値はある雑誌なんじゃないか、と思いました。終了。
ライトノベル発祥以前の、往年の児童向けSF小説の雰囲気が好きだった方なら楽しく読めると思います
2005/08/03
■「MAJOR」の松尾って、「犬夜叉」の妖怪役に出てきそうな顔ですよね(サンデー36号感想)
- 三宮警察庁長官が格好良すぎる(絶対可憐チルドレン)
- 今週のあお高
- ヘタレてない五反田君(ブリザードアクセル)
- ヘタレてる富士丸(見上げてごらん)
- 対桃子編の裏テーマがスーパーマリオであることに今頃気付いた(こわしや我聞)
□
1. 三宮警察庁長官が格好良すぎる(絶対可憐チルドレン)
「私ね、こんな能力だから、この世がおとぎ話とは違うってことはもう判ってる
」
今週の「絶チル」は、主役の紫穂のキャラクターとしての完成度も、そしていわゆる「テレパシー能力」を持っている主人公が抱える問題をテーマとしたSFドラマとしての完成度もかなり高いので、不真面目な感想を書くのが趣味の私としては、突っ込むスキが全く見あたらなくて困ります。
あえて突っ込むとするならエロく成長した紫穂のサディスト警官コスプレのシーンくらいなんですけど、でもこのシーンは作者の方が「さあ、ここに突っ込め!」と誘っているのが明らかなので、ここに対して作者の意図通りに「オレも取り調べられてえー!
」とか叫んでしまうのは、歪んだサンデー感想サイトとしてのプライドが許さないのです(やっかいだ)。
「絶チル」に対するネットの感想で、「サンデーには『少年が読みたいマンガ』だけではなく、『少年に読ませたいマンガ』を掲載する傾向がある
」という趣旨のコメントを読んだことがあるのですが、今週の物語は前回にも増してそういう傾向があるのかな、と思わせる内容でした。
自分のことを心から信じて守ってくれる人が身近にいるって、やっぱり素敵なことなのね! と健全な感想を読者に抱かせるのが、今回のエピソードの狙いだったのではないかと思います。そういう意味では非常によくできたお話でした。「絶チル」は健全なマンガだなあ(不満なの?)。
という訳で今回はとてもよくできたエピソードだったんですけど、あえて突っ込みを入れるとするなら、紫穂パパとして登場した三宮警察庁長官の、度を超した見事なダンディヒゲメガネっぷりでしょうか。職務に忠実な冷徹かつ強靱な精神と、娘を愛している優しい父親の性質を合わせもつ、ある意味完璧な「大人」キャラだと思います。同じ溺愛でも、無節操に子供達にデレデレしている桐壺局長とは大きく異なりますね。ここまでイカした中年男性キャラが出てくるだなんて、椎名高志のマンガ史上ではかなり異常。「MISTERジパング」の織田信秀以来?
ただ、これはあくまで椎名高志のマンガなので、今後紫穂パパが桐壺局長並のアレなキャラに堕ちる恐れも否定できません。ダンディな中年オヤジに萌えるなら今のうち!
2. 今週のあお高
「ピッチャーの血で濡れたボール」から、以前サンデーで連載されていた「砂漠の野球部」を思い出した人?(挨拶)
「砂漠の野球部」は不健全な野球マンガだったので、ピッチャーがボールを血で濡らせてボールの軌道を不規則にさせるスピットボールを投げて勝つなんてことをやっていたのですが、「あおい坂高校野球部」は健全な野球マンガなので、スピットボールにならないようにちゃんとボールを拭いてるところがエライなあと思いました。
まあ、スピットボール以前に、怪我しているのが審判にバレるとその場でゲームオーバーになっちゃうから拭いているんでしょうけど。
あと、今週はなにげに星南高校の癒し系ショート・山下君が大活躍していたのが良かったです。「えへ~なんか打ちやすそうになったよ~
」という台詞は、本来ならは敵役らしく憎々しいイメージを読者に与えるものであるべきなのですが、彼独特のしゃべり方と笑顔のおかげで、何だかとってもフレンドリーかつほのぼのしたものに早変わり。最終局面を迎えて緊張感が高まる今回の試合における、一服の清涼剤と言えましょう。
何故自分がここまで彼に入れ込んでいるのかよく判らないので次。
3. ヘタレてない五反田(ブリザードアクセル)
今回の「ブリザードアクセル」のエピソードの表向きのテーマは「吹雪、スピンを覚えるの巻」なのですが、裏に隠された本当のテーマは「五反田がヘタレ状態から脱出する」であったことは明白。今回の一件ですっかり吹雪にメロメロになっちゃった五反田君は、「これからも相部屋よろしく!
」と本気で嬉しそうです。相部屋!(含み)
性根がひねくれたキャラが大好きな私としては、自分の実力が全く至っていなかったことを自覚してしょぼくれていた状態の彼の方が好きだったのですが、残念ながらこれは歪んだ少年マンガではなく健全な少年マンガなので、いつまでもヘタれたままではいてくれなかった模様。致し方ありませんね(不満なの?)。
4. ヘタレてる富士丸(見上げてごらん)
そんな感じで「ブリアク」の五反田がヘタレから脱出したため、サンデーにおけるスポーツマンガのヘタレ筆頭キャラの座は「見上げてごらん」の富士丸君に委譲されました。
五反田は超人揃いの白帝軍団の中に放り込まれたショックで一時的な自信喪失状態に陥っていたにしろ、元々実力はあるので一度立ち直れば何とかなりそうな感じなのですが、「見上げて」の富士丸の場合は実力はともかく「自信」というものが最初から全くないタイプなので、ある意味五反田よりも成長させるのがやっかいなキャラかも知れません。
まだ主人公の了の試合は終わっていない状態でここまで富士丸のヘタレっぷりをドラマの中でアピールしているということは、おそらくどんな形であれ富士丸のガチな試合が行われる展開になるのではないかと思われます。果たして彼は、五反田に続いてヘタレの立場から脱出できることができるのか否か。勿論、性根がひねくれたキャラが大好きな私としては、いつまでもヘタレたままの彼でいて欲しいのですが。
「見上げてごらん」が「ブリアク」同様に健全な少年マンガなのが悔やまれます(不満なの?)。
5. 対桃子編の裏テーマがスーパーマリオであることに今頃気付いた(こわしや我聞)
桃子=ピーチ姫、ヒゲ兄と弟=マリオとルイージ、クーパ=クッパ、そしてキノピーはキノコ。
すげえ! これってスーパーマリオじゃん!(遅いよ)
今週の「こわしや我聞」に出てきた10歳当時の桃子と、現役の10歳児である「絶チル」の紫穂は、「他人から疎まれる能力を持っている」という意味においては似ているんですけど、子供に対する親の接し方、気の許せる仲間の有無、という周囲の環境が決定的に異なります。紫穂には薫や葵や皆本が必要なように、桃子にも自分のことを心から信じて守ってくれる我聞や、彼の愉快な仲間達の存在が必要であるということなのでしょう。そうでなければ、桃子はツンデレをこじらせてますます歪んだキャラになってしまうことになってしまいかねません。
性根がひねくれたキャラが大好きな私としては桃子にはいつまでも素直になれないツンデレキャラでいて欲しいのですが、でも「こわしや我聞」もやっぱり健全な少年マンガの範疇に入るので、いずれ桃子も我聞を通じて救われる展開になりそうです。よかったですね(不満なの?)。
2005/07/29
■健介殿はサンデーで一番カッコイイ男だと思ったサンデー35号感想
- 名犬ジョン
- 桐壺帝三53歳(絶対可憐チルドレン)
- 今週のあいこら
- 「自由って何だ」「孤独を恐れないこと」(結界師)
- カミロボ
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1. 名犬ジョン
「名犬ジョン」は「うえきの法則プラス」が急遽休載のために掲載された代理原稿作品ですが、思いの外楽しく読むことができました。
本来ならカワイイものに「ゴルゴ13」系の濃いルックスの顔をあてがってギャップで読者を笑わせるパターンのマンガは、おそらくギャグ漫画家を志そうとする人なら必ず一度は作るのではないかと思われますが、「名犬ジョン」は図らずもその黄金パターンの有効性を改めて証明する形になりました。
また、他にも「母さん、とりあえずお豆腐とおっぱい買ってくるから!
」なんて台詞回しにも、作者のセンスを感じます。少なくとも、ここ最近サンデーに出てきた読み切りのギャグマンガの中では、割と「面白い」部類に入るのではないのでしょうか。
とりあえず、作者の橋本時計店氏の名前は覚えておく価値はありそう(エラそう)。
あとついでに最近の「うえきの法則プラス」ですが、新キャラクターのソラが常に食べているハンバーガーが、コマ毎に食べかけ度合いが微妙に異なっている点が気になります。前のコマよりも残っているハンバーガーの量が増えているように見える時もあったりするので、ゆめゆめ油断できません。
もしかして彼女は、ハンバーガーを1個/コマのペースで消費していたりするのでしょうか? それとも、一度食べたハンバーガーを復元させる能力を持っていたりするのか? カワイイ外見に似合わず、なかなか彼女は謎が深そうです。
2. 桐壺帝三53歳(絶対可憐チルドレン)
「しかたなかったんじゃああああああああッ!
」
仕方ないオッサンだなあ(感想)。
それはさておき、今回のお話は、第一話に出てきた朧の台詞「仕事から何かをもらうことも大切ですよ
」を実証するような話になりました。
つまり、大人の仕事は子供に様々なことを教えることであると同時に、「教えたことは守ってくれる」と子供を信頼してあげることであり、子供を信頼するが故に大人は無闇に子供に干渉してはいけない――と子供達から教えてもらうことが、今回のエピソードにおける作者の主張の一つだったのではないかと思います。なんて教育的なマンガなのでしょうか。同じ『教育的』でも、「Dr.椎名の教育的指導!!」における『教育的』とは、教育の意味合いがまったく異なりますね!
昔は「怪人耳かき男」とか「怪人爪切り男」とか超度7クラスの変態ばっかり出てくるマンガを描いてた人が、今ではこんなマトモなマンガを描けるようになるだなんて!(失礼)
また今回は、東野が「お前じゃないっていうならそれを証明しろ! それができたら、もう一度だけお前らのことを信じてやる!
」と言い、薫が拳でそれに応えたように、人間と超能力者が相互を信頼できる関係を築くことこそがこの作品世界においては最も大切であるということが、明示的に提示された回でもあったと思います。
超能力者とは言え所詮中身は普通の人間と一緒に過ぎないので、自分が他人からどう思われているのか不安にもなるし、能力を持っていたらそれを使ってしまいたくなる弱さも持っています。ちさとが東野に対してやったことは、結局は彼女が「普通の人間」であることの証でもあります。
東野のような一般人が、超能力者もそういう意味においては並の人間と全く変わらない存在であることを理解し、そして超能力者がそういった力を無闇にふるわないと信頼することができるようになれば、究極的にはチルドレンが人間にとっての悪魔になる未来の到来を防ぐことに繋がることになるはずです。
大人と子供の間の信頼、そして超能力者と普通の人間との間の信頼。形は異なりますが、相互理解に大切なものはどちらも変わりません。今回のエピソードの中にも出てきた皆本と紫穂のように、お互いがごく自然に手を繋ぎあえることができる関係こそが、この作品世界における「理想の姿」なのでしょう。そんなことを考えさせられたお話でした。
改めてこんなこと書くと、やっぱりこのマンガはすげえ教育的だなあと思わされます。第3話にして、早くも全力で本領を発揮してますね椎名先生。
いやホント、ほんの十数年前までは、超度7クラスの女装癖を持った熱血男性教師が主人公のおかしな四コママンガを描いてた人だったのになあ!(重ねて失礼)
3. 今週のあいこら
いやもう、もうどこから突っ込んでいいのか困ってしまう程、今週の「あいこら」はおかしなお話でした。
基本的には「胸が大きくて悩んでいる女の子の心を主人公が救う」というハートウォームなエピソードのはずなのですが、その主人公が重度のおっぱいフェチで、弓雁ちゃんの心を守るためではなくただ自分の歪んだフェティシズムを満足させるおっぱいを守るためだけに行動しているというだけで、ここまでバカなお話になってしまうのが凄いなと思いました。勿論、バカは常に褒め言葉です。
とはいえ、彼がアクティブに己の変態趣味に基づいた行動を取ったからこそ、胸にコンプレックスを持ってる弓雁ちゃんの尊厳を守ることに結果的には繋がったのも事実。変態趣味の持ち主でも人を救うことができるんだ! という、変態賛歌なエピソードとして解釈することも可能なこのマンガの懐の深さは、決してあなどれません。
あまりにあからさまなツンデレヒロインの存在の印象が強すぎるためか『「ラブひな」の二番煎じ』みたいな評価をネットでよく見かけるこのマンガですが、でもこのマンガが狙っている本当のポイントは、そんな安易なところではないのではないか。先週や今週の「あいこら」を読んで、私は本気でそう考えるようになって来ました。
4. 「自由って何だ」「孤独を恐れないこと」(結界師)
本当に自由な存在である者は、孤独であることを誇ったりはしないものです。
実際問題として、限に対して「自由」を語る火黒は、力は持っていても本当の意味において「自由」な存在ではないんですよね。彼が限を仲間に引き入れようとしているのは、黒芒楼側が『裏会』戦力の切り崩しを画策しているからという理由以外にも、火黒が自由を得るためには限の力が必要になるからではないか? と、深読みしたくなるようなエピソードでした。
その後に出てきた黒芒楼の連中も、諸般の事情で不自由な境遇に甘んじている様子が描写されています。「結界師」の世界で化け物やっていくのも、色々と大変なんですねえ。
5. カミロボ
「彼は子供の頃より、27年間もの間、ただ自らの楽しみのためにカミロボを生み出し続けてきた!
」
そして、それを自らの世界の中で、たった一人で戦わせてきた!
カミロボとは!
一人の人間が生み出した、一人遊びの世界である!
たった一人で生み出した、究極の一人遊びの世界!
冒頭のアオリ文句を読んだだけで、私は猛烈に感動した!(弱い)
子供の頃は誰しもが自分だけの一人遊びの世界を持っていたはずであり、それ故にその世界を大人になるまで失うことなく育て続けるために必要なパワーというか妄想力の大きさと、それを維持し続けるための苦労も、また誰しもが理解できることでしょう。
「カミロボ」制作者の安居氏は、自分の中に生まれた妄想の世界を「大人になっても自分の好きなものを捨てる必要はない
」と信じて育て続け、また彼の周囲の人たちも彼の妄想をバカにすることなく、逆に「面白い!」と価値を発見できるだけの感性があったからこそ、「カミロボ」は現在のような形にまで成長したのでしょう。
今回掲載された「カミロボ誕生物語」は、自分だけの妄想を育てることの大切さと、他人の妄想を面白がれるセンスを持つことの大切さを描いた、妄想感動巨編なのです。少なくとも私はそう理解しました。この理解は間違っていませんよね? ね?
また、今回の作画は萌える少年キャラを描かせたらサンザー随一の力を発揮するあおやぎ孝夫先生が担当していますが、なんかこうまさに適材適所ですな。無邪気でやんちゃな少年時代、夢を捨てて現実を見据えようとするクールな中学時代、カミロボを仲間から認められて照れまくってる大学時代、そして顎髭メガネキャラな現在と、どの時代の主人公もかなりの萌えっぷり。まだその腕は衰えていないようで何よりです。次の登場にも期待してます。